新幹線の利用拡大が、JR東・東海・西の成長を支えてきた

 JR各社の業績(連結経常利益)推移をご覧ください。今期(2020年3月期)は減益が多いものの、前期までは安定的に最高益を更新してきました。

JR4社の連結経常利益:2018年3月期(実績)・19年3月期(実績)・20年3月期(会社予想)

出所:各社決算資料より作成

 2018年3月期、4社そろって経常最高益を更新しました。JR東日本はその時点で2期連続、JR東海は6期連続、JR西日本は2期ぶりの最高益でした。JR九州は、上場後、初の最高益でした。

 今期(2020年3月期)、現時点でJR西日本のみ最高益を更新する見通しです。JR東日本は10月の大型台風で長野新幹線が深刻な被害を受けたことに加え、新型コロナウイルスの影響も受けるため、減益となる見通しです。JR東海・九州も減益見込みです。新型コロナウイルスの影響が長引くと、今期業績は計画未達になる可能性もあると考えています。

 それでも、JR4社は、中長期的に最高益を更新していく力があると考えています。新幹線および多角化事業(不動産・レジャーなど)が成長ドライバーになると思います。

人口の増えない日本で、新幹線が牽引役となってJR4社は最高益を更新

 人口の増えない日本で、鉄道業は成熟産業と見られていましたが、新幹線収入の拡大によって、JR東海・東日本・西日本は、安定的に最高益を更新してきました。

 新幹線は、かつてビジネス客中心の乗り物でしたが、今や「国民の足」として、利用が拡大してきました。そこに、外国人観光客の利用拡大がさらに追い風となっています。グリーン席の利用率増加も、収益拡大に寄与しています。

 2015年11月に上場とともに完全民営化(政府保有株をゼロにすること)を達成したJR九州も、先行き、収益を拡大していくと予想しています。人口減少地域で鉄道業の収益が悪化する不安はあるものの、九州新幹線の収益拡大が期待されます。また、早くから、観光客を楽しませる多様な観光列車(デザイン&ストーリー列車)の導入を進めてきた効果も、九州地区へのアジアからの観光客増加で効果を発揮します。ホテルや不動産業などへの多角化も進んでおり、人口減少を補って、グループで収益を底上げしていく体制ができあがっていると考えています。

 JR九州が導入で先行した豪華寝台列車(クルーズトレイン)「ななつ星」の旅は、予約倍率が10倍前後で、好調です。従来の寝台列車とは異なり、動くホテルのような快適さが受けています。JR九州の成功を見て、JR西日本・JR東日本も豪華寝台列車の旅を導入しましたが、いずれも好評です。

 なお、私の勝手な予想ですが、いずれJR4社が提携して豪華寝台列車を使って全国をめぐる長期旅行が売り出されると思っています。そうなれば高い人気を集め、4社の収益拡大に寄与すると考えています。