2020年の高値予想、パラジウムは2,100ドル

 最後はパラジウムです。2019年12月16日時点で、1トロイオンスあたり1,920ドルあたりで推移しています。現時点で、2020年は1,400~2,100ドルの範囲で推移すると考えています。

図:パラジウム価格の2020年の想定レンジ (中心限月、日足、終値) 単位:ドル/トロイオンス

出所:CMEのデータをもとに筆者作成

 パラジウムは近年、急騰の様相を呈する数少ないコモディティ(商品)銘柄の一つです。現在の価格は、2016年1月に比べて約300%、2018年1月に比べて約90%、2019年1月に比べて約60%高い水準にあります。

 以前のレポート「プラチナ安値圏、パラジウム史上最高値。長期的に貴金属に投資するなら?」で述べたとおり、長期的に、供給が限定的である中、消費が増加傾向にあり、継続して需給バランスが供給不足の状態にあります。

 大統領選挙との関連で言えば、プラチナと同様、株高が発生すれば消費増加期待が高まり、価格が上昇する可能性があります。この件を考慮し、現在よりも来年のいずれかのタイミングでさらに高い水準に達すると考えています。

 一方、トランプ大統領の株高施策が失敗した場合、パラジウム価格も下落する可能性があります。また、現在の価格上昇の主因である需給バランス(現在は供給不足)が、供給過剰に転じたり、供給不足が急激に縮小したりした場合は、パラジウム価格は大きく下落する可能性があります。

 パラジウムの需給に関しては、海外の主要メディアが公表する年次の調査報告書(毎年5月ごろに公表)に記載されたデータが参照される場合が多く、来年公表される同報告書で2019年の実数値や2020年の見通しが供給過剰になったりした場合、これまでの価格上昇を支えた根拠が消滅し、価格が下落に転じる可能性があります。

 同統計は年次で公表されるため、公表から向こう1年間は、足元のパラジウムの需給は弱い、という印象が続く可能性があるため、このことをきっかけに発生した下落は、長期化する可能性もあります。この点を踏まえ、パラジウムについては他の貴金属よりも想定安値を深めにしました。

 金、銀、プラチナ、パラジウムの価格見通しについて以下のとおりまとめました。

図:2020年の各種貴金属の価格の想定(2019年12月16日現在)

出所:CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)のデータをもとに筆者想定