社会主義と資本主義の衝突

 目先の相場にはおおむねどの運用者も強気だが、ポール・チューダー・ジョーンズは、来年の米大統領選挙で富裕税やGAFA解体を公約に掲げるエリザベス・ウォーレンが勝てばS&P500は20~25%下落すると予想している。来年も人気のウォーレンの勢いが止まらない場合は、株式市場は平静ではいられないだろう。

 来年の相場のリスクは、選挙年における政治の二極化であり、これは主に社会主義と資本主義の衝突である。この衝突は富、収入、機会の格差によるもので、次の景気後退期には裕福な資本家と貧しい社会主義者との衝突は醜いものになるだろう。

 通常、不景気になると精神は右旋回し、社会が右傾化していく。右傾化というと、誰もがナチスドイツのヒトラーを思い出すだろう。ヒトラーを生んだのは、自身の病んだ精神をヒトラーに投影した大衆という人々だ。トランプ政権が誕生したのも、ブレグジットも不景気と貧富の格差の拡大が原因である。

 一方で大統領選に名乗りを上げたエリザベス・ウォーレンの人気が急上昇しているように、米国では社会民主主義の勃興がみられる。1年前にウエートレスとして働いていたアレクサンドリア・オカシオ=コルテスは、2019年1月からニューヨーク州第14選挙区選出の下院議員に就任した。2011年にボストン大学を卒業し、地元ブロンクスに戻ってからは、不景気の影響や父親が死去したこともあり、家計を支えるため、レストランでウエーターやバーテンダーなどの仕事をしていた。The Interceptによると、母親もタクシー運転手やハウスキーパーなどの仕事をかけもちしていたという。

 米国の雇用が本当によかったら、こんな政治家は出てこないだろう。人間は飯が食えているうちは黙っているが、飯が食えなくなると暴れ出す。米国は1%の富裕層と対99%の貧困層の闘いになっている。

 NYダウも日経平均も月足をみてみると、現在は両方ともまだ調整相場の範ちゅうにある。調整はかなり進んでいることから、大きなトレンドは上げるにせよ、下げるにせよ、来年が正念場になるのではないだろうか?

NYダウ(月足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル 調整相場(次のトレンド待ち)

出所:石原順

日経平均(月足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル 調整相場(次のトレンド待ち)

出所:石原順

 ドル/円は三角もちあいのブレイク待ちである。

ドル/円(週足)と三角もちあい

出所:石原順