「結局のところ次の景気下降局面が迫る中で金融政策はこの2年間は危険なほど効果が薄い状態となるだろう」とダリオは予言する。状況はもっと悪いだろう。それはもし連銀や他の中央銀行がもはや市場を浮上する力を持っていないと市場が判断した場合には、特に中央銀行によってS&Pが数百%押し上げられていることを考慮すれば、市場は近いうちに大きな痛みを伴う調整局面に入る可能性があるが、ダリオの予言ははたして実現するのだろうか? ダリオは、「市場経済サイクルというのは毎回異なった側面があっても必ず同じ段階を踏むとして、6つ(7つ)の段階」を指摘している。 

 われわれは今、レイ・ダリオの著作「Big Debt Crises」で取り上げられている『レイ・ダリオの債務サイクル』の Pushing on a String(金融政策の空振り期)」の入口に来ているのかもしれない。

レイ・ダリオの市場経済サイクル

出所:レイ・ダリオ ”A Template For Understanding Big Debt Crises”(巨大債務危機を理解するためのテンプレート)

*注:
債務のサイクル(6)「Pushing on a String(金融政策の空振り期)」
長期にわたる債務循環の後期。金利をいくら引き下げ、資産をいくら買い入れたところでその効果は限定的となり、中央銀行は政策の転換という現実に直面する。1930年代の状況を目の当たりにした政策当局者は”pushing on a string”という言葉を用いた。