訪日外国人観光客が天候不順や日韓関係悪化の影響で減少

 訪日外国人観光客の数は、7月に過去最高の299万人を達成しましたが、8月以降、減少しつつあります。昨年(2018年)も今年(2019年)も、8~10月に外国人観光客の数が落ち込んでいます。2年連続の異常気象に加え、今年は日韓関係悪化の影響も受けています。2019年9月は、韓国からの観光客数が前年同月比58%減の20万1,200人となりました。

【注】インバウンド関連株
 訪日外国人観光客による日本国内での消費支出を「インバウンド消費」と呼びます。インバウンド消費の増加で恩恵を受ける銘柄を、「インバウンド関連株」と呼びます。JR4社は、インバウンド消費の恩恵で、新幹線や観光事業の収入が拡大しているので、インバウンド関連株と見られています。

訪日外国人観光客数の推移:2011年1月~2019年9月

出所:日本政府観光局(JNTO)より楽天証券経済研究所が作成

訪日外国人観光客数の上位8カ国:2018年9月

出所:日本政府観光局(JNTO)より楽天証券経済研究所が作成

 2018年は、6月から10月まで、異常気象や地震の影響がマイナス要因となりました。6月18日の大阪府北部地震、6月28日から7月8日にかけて続いた西日本豪雨、さらに8月から大型台風の来襲が続き9月に豪雨で水没した関西国際空港が閉鎖された影響が出ました。さらに、9月に北海道で大規模地震が起こった影響もマイナス要因となりました。

 2019年は、天候不順に加え、韓国からの観光客の大幅減少がマイナス要因となっています。

 ただし、外国人観光客の数は、中期的にさらに増加する余地があると考えています。インバウンド・ブームが続く、構造要因が変わっていないからです。

◆日本が観光地として魅力的であること
◆アジアで、中間層(富裕層と貧困層の中間にある層)の所得が、海外旅行ができるくらいまで増加してきたこと
◆日本政府が、観光ビザ発給の要件緩和など、海外からの観光客誘致策を取ってきたこと

 外国人観光客の1人当たり買い物額は減少していくと考えられますが、日本での体験にかけるお金(コト消費)は増加していくと考えられます。JR各社は、コト消費の拡大で恩恵を受けると考えています。

今、JR東日本に注目する理由

 JR4社とも、中期的な成長力を考えれば、投資価値は高いと考えています。ただし、4社で相対比較すれば、東京を地盤に持ち、不動産・小売など多角化事業で高い競争力を持つJR東日本の投資価値が一番高いと考えています。ちなみに、2019年3月末時点で、JR東日本は、賃貸不動産に1兆4,661億円もの含み益を有します。

 含み益の大きさで、三菱地所、三井不動産、住友不動産についで第4位です。にもかかわらず、今年は台風19号で大きな被害を受けたことや、インバウンド減少の影響を受け、JR東日本の株価はさえません。今、投資していく良いタイミングと思います。

 JR西日本は昨年、西日本豪雨の被害を受けて株価が下落した時は割安でした。ところが、今年は3期連続の経常最高益を見込むことなどが評価されて、株価が大きく上昇しています。今の投資タイミングで考えると、JR東日本の方が良いと考えます。