量的緩和政策に出口は存在しない!?

 2019年9月26日の「バブルを延命させるFRBの新たな政策が浮上!隠れQE4を画策か!?」というレポートで、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長らが、『隠れQE(量的緩和)』を画策し、バブルを延命させようと思っているのではないかという疑念を述べた。

【今回の米レポ市場への介入、すなわち、OMO(公開市場操作/Open Market Operations)は特別措置ということになっている。しかし、「この先、短期金利市場がまたおかしくなったら、連銀はOMOを既成事実化して長期にやるのではないか」という観測が浮上している。これはOMOではなく、POMO(恒久公開市場操作/Permanent open market operations)である。

 OMOをPOMOに変えてQEをやるというのは、いかにも連銀がやりそうなことだ。これは危機を防ぎバブルを延命させる「隠れQE政策」と言えるだろう。POMOは10月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)で検討、あるいは決定されるのではないかと噂になっている。

 POMOという隠れQEはトランプ米大統領への対策にもなる。パウエルFRB議長はトランプ大統領に強烈に批判されており、さりとて、現状で大幅利下げやQE4(量的緩和第4弾)はやりたくない。しかし、POMOならQE4とは呼ばずに隠れQEとしてバブルを延命でき、株価が高値圏にあれば再選を狙うトランプ大統領もおとなしくなる可能性があるというのが、金融当局者の見立てであろう。】

 その臆測通り、2019年10月8日にパウエルFRB議長はバランスシート拡大再開を表明した。

FRB議長、バランスシート拡大再開を表明-量的緩和は否定
(ブルームバーグ 2019年10月9日)

 FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、短期金融市場で最近見られたような混乱が再発しないよう、当局は米財務省証券の購入を再開すると表明した。また、今年3回目となる利下げの可能性もほのめかした。

 議長は8日、デンバーで開かれたNABE(全米企業エコノミスト協会)の年次会合で、「私と同僚は徐々に準備預金の供給を増やしていく措置を近いうちに発表する方針だ」と述べた。

 パウエル議長は購入の対象としてTビル(米財務省短期証券)を検討しているとした上で、金融危機時に実施した量的緩和プログラムの復活と捉えるべきではないと強調した。議長発言を受けて3カ月物Tビルの利回りは低下した。

 パウエル議長は「準備預金管理のためのバランスシートの拡大は、金融危機後に当局が実施した大規模資産購入プログラムと一切混同されるべきではないことを強調したい」と発言。「最近の技術的な問題も、その解決に向けて当局が熟考しているTビルの購入も、金融政策スタンスに重大な影響を与えるものではない」と説明。「これはQEではない」と、講演後の討論で強調した。

 QEは否定し、これはQEではないと強調しているが、同じことだ。POMOはQE4ではないので、今後、危機が起こればQE4を発動する流れは出来上がっていると考えていいだろう。

 ファンドでミーティングを行ったが、これで米国株の下方硬直性は強化されたと言えるだろう。POMOを最低2年くらいは続けるだろうという見通しを運用者は述べているが、FRBの総資産は過去3週間で1,760億ドル増加した。これは最大800億ドル程度増加していたQE3の時の2倍のペースである。

連邦準備銀行の総資産 3兆9,458億ドル(2004~2019年)

出所:セントルイス地区連銀

連邦準備銀行の総資産 3兆9,458億ドル(2015~2019年)

 2019年9月から債務の買い入れが急拡大している

出所:セントルイス地区連銀