中国の “安全資産の配分変更”に注目

 およそ1年前、米中間の貿易における対立は“米中貿易交渉”という言葉で表現されることが多かったと記憶しています。しかしその後、お互いに関税を引き上げたり、米国が中国のファーウェイの製品を買わないように同盟国に呼び掛けたり、中国が米国にレアアースを輸出しないとほのめかしたりするなど、どんどんと対立が激化し、いまでは“米中貿易戦争”という言葉が定着しました。

 この激化の過程で、中国において金市場の動向に関わる重要な変化が起きていました。中国が米国債の保有残高を減少させ、金の保有高を増加させていたのです。数カ月前に新聞などで報じられた後もこの傾向が続いています。

図:中国の米国債残高と中国人民銀行の金保有高

出所:IMF(国際通貨基金)、米国財務省のデータをもとに筆者作成

 中国の米国債保有高は2019年3月時点で1兆1200億ドルと世界1位です。また、中国の中央銀行の金保有高は6,060万トロイオンスとこちらも世界1位です。

 米国債と金は、リスクが高まった時に注目が集まる傾向があります(いわゆる安全資産)。

中国が米国債の残高を減らして金の保有高を高めている(安全資産の配分を変更している)ことについては、

貿易戦争が激化し、敵対ムードが高まる米国の資産の保有を避けたい

とはいえ、世界的にリスクが高まる中で代替となる資産残高を増やしたい

よって金の保有高を増やす

 

というような流れが背景にあると考えられます。