金価格急反発は、短期的な“ドル安・ドル建て金高”が要因

図:NY金先物(期近、終値)とドル指数の動き(2019年2月1日を100として指数化) 

出所:CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)および*ICE USのデータをもとに筆者作成
*ICU US=ICE Futures U.S.(ICEフューチャーズU.S.)。米国のニューヨークに本拠を置く、デリバティブ取引所。農産物やエネルギー、金属、排出権、通貨、クレジット、株価指数などの先物・オプションを上場している

 5月下旬、ドル指数(複数の主要通貨に対するドルの総合的な強さを示す指数)の下落が目立ち始めました。米中貿易戦争が激化する中、停滞する懸念が生じつつある米国経済を上向かせるために金利の引き下げが必要であると、FRB(米連邦準備制度理事会)議長が発言したことや、5月の米国雇用統計が軟調だったことなどが背景にあります。

 例えば、上図の2019年2月下旬から3月上旬に起きたドル指数の上昇の際、NY金価格は反落。3月上旬から下旬にかけて起きたドル指数の下落の際、NY金価格は反発しました。

 ドルは現在の基軸通貨(世界の貿易において最も広く使われている通貨)であり、金は歴史上、世界共通のお金として用いられてきた経緯があることから、ドルと金はともに“世界のお金”という側面を持っています。

 片方に注目が集まれば、相対的にもう片方への注目度が下がります。つまり、2つの価格の関係は、逆相関(ドルが上昇すれば金価格が下がる。逆もしかり)となる傾向があります。

 足元の金価格の上昇は、金利引き下げの言及や雇用統計が軟調だったことによるドル安が、直接的なきっかけだったと言えます。