新債券王ジェフリー・ガンドラック氏は昨年2017年の8月に以下のような相場観を述べた。

 米ダブルライン・キャピタルの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のジェフリー・ガンドラック氏は、金融市場も自身の業界も、「いいことずくめ」であり過ぎると考え、そんな世界から距離を置こうとしている。

 ジャンク債や新興市場債などのリスク資産は過大評価されていると考える同氏は、これらの資産のポジションを縮小、高品質で金利上昇からの影響が小さいクレジット商品への投資を増やしている。それによって当面のパフォーマンスを幾分犠牲にすることは承知の上だ。

 ガンドラック氏はどんな出来事や展開が投資家センチメントを転換させるかは予言できないが、今は慎重になる方が、手遅れになるまでしがみついているより良いと考えている。

「きっかけが現れるのを待っていれば、安い値段で売ることになる。今は『リスクを心配せずに何を買っても大丈夫』な時期ではない。それをするなら1年半前にすべきだった」と7日の電話インタビューで話した。

『ガンドラック氏、手遅れになるまでしがみつくな-今を犠牲にしても』 (2017年8月8日 ブルームバーグより)

 ガンドラック氏だけではない。ポール・チューダー・ジョーンズ氏も今年の2月2日に、「市場は危険な金融バブルだ。今の相場はこれまでに行われてきた金融バブルの再現であり、トランプ減税などの腐敗した財政政策はやめるべきだ」と述べていた。

 筆者の独断と偏見で言えば、「相場はファーストイン・ファーストアウト」なのである。つまり、誰も買っていない相場の初動で相場に参入し、人よりも先に相場から降りることである。危険と言われる新興国投資やジャンク債投資、あるいは昨今のバブルを象徴するビットコイン投資なども、まだ誰もやっていないときに相場に参入する分には、比較的安全な投資になるのである。

 ガンドラック氏という投資家が新債券王と呼ばれるのは、しっかりした投資哲学を持っているからだ。彼は危ない相場には入らない。

 昨年2017年の6月から8月に筆者は2008年の金融危機直後に買った株の長期投資のポジションを手仕舞った。2018年の途中まで相場は上がったが、今年の相場では、「売ったり買ったり」というトレーディングベースで対処している。「きっかけが現れるのを待っていれば、安い値段で売ることになる」とガンドラック氏が述べているように、相場の最後までしがみつくと、結局、安値で売らされるということだ。

 筆者はこれまで、債券王ビル・グロース氏や新債券王ジェフリー・ガンドラック氏、世界最大のヘッジファンド運用者レイ・ダリオ氏らの相場観を紹介してきたが、あの凄腕運用者のスタンリー・ドラッケンミラー氏も弱気転換している。幾度ものバブル崩壊を乗り切り、相場を長くやっている人は市場の変容に気づいている。

【著名投資家スタンリー・ドラッケンミラー氏の疑問は、どこまで悪化するのかという一点のみだ。金融市場はここ3カ月に激しいボラティリティーを経験したが、ドラッケンミラー氏は世界経済が既に減速しつつある中で中央銀行が景気刺激策を引き揚げることから、トレーディング環境はなお一層厳しいものになる可能性があると警告。今後数年間にわたる株式リターン低迷を見込む一方、利回りの低下が続くとの予想から米国債の購入を続けている。ドラッケンミラー氏はブルームバーグテレビジョンのインタビューで、「私が従来ビジネスで活用している指標を見ると、まだ赤信号ではないが黄色であることは確実で、警告シグナルを発している」と指摘。「最も確率が高いのは、この先厳しい時期を迎えるということだ」と述べた。同氏は景気動向に敏感な株式銘柄が9月以降に20%余り下げていることや、期間が短めの米国債での逆イールドなどを警告シグナルとして挙げた】(2018年12月19日ブルームバーグ『ドラッケンミラー氏:金融市場に黄信号-厳しい取引環境を見込む』より)