米10年国債金利(月足) 債券はバブルか?先行きはインフレかそれともデフレ不況か…

出所:石原順

 

利上げをしないとインフレ懸念が浮上し、利上げをすると景気後退や株の下落を招来する

 イエレンFRB前議長のビハインド・ザ・カーブ(利上げ後ずれ)という<負の遺産>を継承したパウエルFRB議長は、「利上げをしないとインフレ懸念が浮上し、利上げをすると景気後退や株の下落を招来する」という、金利を上げるのも下げるのも地獄というところまで追い詰められている。

 新債券王のガンドラック氏は12月17日のCNBC(コンシューマー・ニュース・アンド・ビジネス・チャンネル)のインタビューに答え、「株式市場は弱気相場入りした。この弱気相場は長く続く」と発言した。

【米ダブルライン・キャピタルの最高投資責任者(CIO)のジェフリー・ガンドラック氏は12月17日、今週開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)では利上げ見送りを決定すべきだとの見解を示した。債券市場を巡る懸念と、景気鈍化で2020年に政策の転換を迫られる可能性に言及した。ガンドラック氏はCNBCのインタビューで、「金融当局は利上げすべきではないと思う」と述べ、債券市場はFRBが利上げする必要はないと告げていると同氏は指摘した。

ガンドラック氏のその他のコメント:

  • 2019年は株式市場の弱気相場が続く可能性が高く、資本温存の年に
  • 最も有望な投資先は、積極的に管理された高品質かつ低ボラティリティーで、デュレーションの短い債券ファンド
  • 中国がトランプ米大統領のレトリックに反発する中、米中貿易戦争は一段と悪化する公算が大きく、世界経済に打撃となろう
  • 米国の赤字が大幅に拡大し、借り入れコストと米国債の利回りは上昇の可能性】
2018年12月18日ブルームバーグ『米国は今週、利上げすべきではない-ダブルラインのガンドラック氏』より

 今年2018年の1月9日に新債券王ジェフリー・ガンドラック氏(ダブルライン・キャピタルCIO)はウェブキャストで、「あらゆるリセッション(景気後退)指数はリセッションにない状況を示しており、これはそのような状況が織り込まれていることを意味する。このため私はS&P500について、2018年の早い時期にかなり好調に動いた後は下がるとみている。ビットコインを人々は安全と思っているが、私はその逆だと感じると述べた。さらに、今年の最善の投資先の一つは商品かもしれない」(「ガンドラック氏:S&P500の18年リターンはマイナス-恒例の見通し」1月10日 ブルームバーグより)との見方を示し、株式市場に警鐘を鳴らしていた。

 ガンドラック氏は相場の絶頂の幸福感の中で2018年のS&P500種株価指数の年間パフォーマンスはマイナスになると言って、ウォール街から悪意のある嘲笑を浴びていた。しかし、実際の相場は彼の言う通りになっている。2018年の1月は世界の株式相場や景気の事実上のピークだった。

S&P500(月足)

出所:石原順

 

世界債務と世界GDPの増加

 現在の世界債務残高は約230兆ドルだ。世界GDP(国内総生産)比で300%を大幅に上回っている。しかも、1980年代は世界債務の増加が世界GDPの成長を上回り始めたにすぎなかった。それが今や完全に持続不可能となっている。

出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート 

 

 筆者はこの相場に早くから警鐘を鳴らしてきた。2018年2月8日のレポートでエリオット波動をとりあげ、「人々の多くは、結局、バブル崩壊に巻き込まれて大損して終わることになる。それが市場の基本原理である。バブル相場は<押し目買い>という過去の成功体験が仇となって、相場が天井を打っても相場から降りられないからだ」と、この相場に警鐘を鳴らした。筆者が言いたいのは、相場がどこで天井を打つのかは分からないが、「5波動目=相場の最終波動にはしがみつかない」ということである。たとえ、最後の上げを取り損ねることになっても…。

NYダウ(週足)と波動カウント 5波動の天井をつけたようにみえる

出所:石原順