「バイデン大統領誕生」は市場に凶なのか吉なのか

 大統領選挙と同時に下院と上院の議会選挙が実施され、下院は全議席(435議席)改選、上院は100議席のうち3分の1(33議席)が改選されます。これにより上下両院議会の勢力図も変化する可能性があります。

 選挙結果次第ではホワイトハウスに加え、民主党が下院と上院の過半を抑える「トリプル・ブルー」(民主党の党色は青)が誕生するとの観測もあります。

 この場合、バイデン新大統領は来年1月に就任早々、トランプ大統領がことごとく否定してきたオバマ政権下の政策を復活させる取り組みを始めるでしょう。

 内政面では、コロナ危機の犠牲者の多くが無保険だった(高額治療費が払えず病院に行けなかった)低所得者やマイノリティの現状を踏まえ、オバマケア(医療保険制度改革)の拡充を目指すでしょう。

 外交面ではトランプ大統領が離脱した(オバマ政権の外交政策だった)パリ協定、TPP、イラン核合意に「復帰あるいは交渉再開」に転じる可能性が高いと考えられます。

 特に、「格差の是正」を目指す民主党内の左派系リベラルの意向を受け「大きな政府(財源)」を目指す民主党政権が法人税率、金融取引税(キャピタルゲイン税)率、所得税の最高税率を引き上げ、富裕層資産課税の導入を検討するなど「反・大企業」、「反・ウォール街」、「反・富裕層」と呼ばれる政策が視野に入ってくる可能性もありそうです(図表4)。

<図表4>トランンプ大統領とバイデン候補の政策比較<概略>

*上記は参考情報であり将来の政策実現を保証するものではありません。 出所:各種情報・報道より楽天証券経済研究所作成(2020年6月時点)

 一方、オバマ政権下で「親中派」と称されたバイデン候補が、トランプ大統領や議会が強硬姿勢を示してきた対中政策でどの程度「対決より交渉(対話)」に転じるかも注目されます。

 米国内の抗議デモへの対応や大統領選挙を前にして株価や景気への影響を配慮して「本格的な対中強硬策」を控えている印象のあるトランプ大統領が、再選に成功したとたんに(2期目は選挙を気にする必要はない)IT分野での覇権争い、香港・人権問題、安全保障(地政学的な対峙)の面で対中強硬姿勢を強めていく可能性が指摘されています。

 トランプ大統領が最近の劣勢を埋めるため、集票を目的とした「なりふりかまわない」景気政策や外交政策を打ち出してくる可能性もあります。

 夏から秋の米国市場は、トランプ落選(バイデン新大統領誕生)とトランプ再選のどちらが「経済成長と民主主義進展のバランス面」でベターなのかを決める有権者の選択を見守る神経質な展開となりそうです。

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