世界株高の背景に米中景況感のサプライズ的な改善

 今週も米国株も日本株も堅調な動きとなりました。特に米国市場では、大手IT関連株で構成される「NYSE FANG+指数」が最高値を更新。債券が売られ、長期金利が上昇したことでドル/円相場も堅調で、日経平均株価は2万2,000円台後半で下値を切り上げました。

 図表1は、米国と中国の経済サプライズ指数の約1年推移を示したものです。経済サプライズ指数とは、各経済指標の発表値と市場予想(エコノミストの事前予想平均)とのかい離幅を指数化したものです。

 同指数は、経済指標の発表値が市場予想を上回れば上向き、市場予想を下回れば下向きとなります。コロナ危機で米・中の経済サプライズ指数は2月末以降急落しましたが、中国は3月中旬に、米国は4月末に底入れしてきました。中国の5月PMI(企業の景況感調査)では、製造業も非製造(サービス)業も回復基調を示しました。

 中国の5月の自動車販売台数は前年同月比+12%と発表(全国乗用車市場情報連合会)。米国で3日に発表された5月・ADP雇用統計(民間調査)では雇用減少幅が276万人と市場予想(900万人減少)よりも「悪くない」実績でした。

 市場は実体経済よりも「景気の方向感」を材料視する傾向があります。世界的な金融緩和と過剰流動性で生まれた株価回復が、先行きの景況感を先取りしている感もあります。

 ただ、5日に発表される米・雇用統計(5月分)では失業率が19.5%に上昇(悪化)する市場予想となっており(4月は14.7%)、株式市場が実体経済の悪さをあらためて材料視する可能性もありますので注意を要します。

<図表1>米国と中国の景況感がサプライズ的に上向いてきた

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2019年7月初~2020年6月3日)