新型コロナウィルス蔓延による国家非常事態宣言が発令される中、トウシル編集部では5人の有名投資ブロガーがコロナ暴落にどう対処し、どのような危機管理を行ったかを緊急取材した。独自の「高値ブレイク」投資法で2億円の資産を築いたDUKE。さん、米国株やETFに精通し資産激増に成功したたぱぞうさん、数々の暴落相場を切り抜けてきたデイトレ勇者・むらやんさん、愛するアクティブ投信の含み益がベンツ数台分のrennyさん、インデックスファンドへのほったらかし積立投資を行う虫とり小僧さんなど、独自の投資スタイルを確立し実績を挙げている、そうそうたるメンバーだ。

 3月末時点に行った調査だが、結論から言うと、この5人の投資家は、今回のコロナ・ショックでは「無傷」または「かすり傷」で逃げ切った。中には底値買いや増額を行い、暴落を逆手にとって利益を挙げた人もいる。ウイルス蔓延のエリア拡大に伴い、各国の対応やそれに伴う金融施策、経済情勢が刻々と変化。先が読めないという点ではどの投資家も平等だったはずなのに、この5人はなぜ、コロナ・ショックの中、生き延びることができたのだろうか? 彼らのサバイバル術から、波乱相場を乗り切る方法を探ってみよう。

コロナ・ショック、個人投資家はどう動いた?

 まずはコロナ・ショックの経過を整理してみよう。

 震源地となった中国・武漢で新型コロナウイルスの発生が見られたのは2019年12月ごろだ。それ以降、あっという間に感染エリアが広がり、患者や死者が爆発的に増えた。欧米諸国は当初、「対岸の火事」と深刻視せず、2月10日には米国株価指数S&P500が史上最高値を更新するほどの好景気だった。

 しかし、イタリアを中心に欧州各国で感染者が激増。2月25日には米サンフランシスコ市が非常事態を宣言し、米国疾病対策センターCDCが「米国でも感染爆発が避けられない」と警鐘を鳴らすと事態は一変、世界的に株価が急落。トランプ米大統領が欧州から米国国内への入国制限を発表した3月12日のNYダウ平均株価は2,352ドル安、FRB(米連邦準備制度理事会)が緊急利下げした翌日の16日にはなんと2,997ドル安と、過去最大の下げ幅を塗り替える緊急事態となった。

 急落スピードに追い付けず、打つ手を迷っている間に含み損が膨張。茫然自失のまま株価の下落を眺めているだけ、という投資家も多かったはずだ。この勝敗を分ける重要な期間、5人の投資家はどう動いたのだろうか?

 いち早く危険を察知し、保有する持ち株を売却したのはたぱぞうさんDUKE。さんむらやんさんの「株式投資」組だ。偶然なのか、必然なのか、彼らは口をそろえて「いつもと違う感じがした」という。

 最も早く異変を感じ取っていたのはたぱぞうさん。2020年の年初、買いたい米国株のバリューを探ってみたら、アマゾン(AMZN)以外は自分基準からみてオーバーバリュー(割高)。この時点で「何かおかしい」と予感が働き、油断なく市場を見ていたが、爆発的に患者数が増えた2月に入ると米国の株価指数が連日、史上最高値を更新。「リーマン・ショックの前夜に似てきたな」と感じ、資金の大半を現金化した。

 DUKE。さんの見切りも極めて迅速。「2月24日の米国株式市場の暴落を見て、それまでの米国株価指数のデータから、危険サインと判断しました」。

 日ごろから自身が確立したルールに基づき市場分析・売買ルールを決めているDUKE。さんは、危険サインを確認した翌日の2月25日から、ボックス圏を下割れした銘柄や、それまで相対的に弱い動きをしていた銘柄から順に売却を進めた。加えて持ち株の損失拡大に対するヘッジとして、全体相場が下落するほど利益が出る日経平均先物の売りを活用。年始から見て、数%すなわち1ケタ台のかすり傷でコロナ・ショックを切り抜けた。

 数々の「ショック」に果敢に立ち向かってきたデイトレーダーのむらやんさんも、2月初旬に危機回避を開始。「暴落相場には派手なリバウンドが付き物。でも、2月下旬までのコロナ・ショックでは、このリバウンド上昇がとても弱い、これは危ない」と判断。2月末には保有株の約8割を売却した。「市場の雰囲気を察知するには、欧米で株式市場がオープンしている夜間の取引をチェックすることも大切です。NYダウが1,000ドル超下落して、日経平均株夜間CFD取引価格も1,000円以上暴落という状況を見れば、誰でもこれは危険と思うはず」とむらやんさん。3月上旬から中旬にかけての本格的な大暴落を回避した。

「株価が割高すぎる」(たぱぞうさん)、「危険サインが出た」(DUKE。さん)、「リバウンドが弱い」(むらやんさん)と、独自の基準で暴落を予測した3人。危険を感じたとしても、つい「様子見」をしてしまう投資家も少なくないが、逃げ切りに成功した彼らに共通するのは、躊躇せず回避行動に移せる「反射神経のよさ」だ。過去には失敗も重ねつつ、繰り返し「冷静に状況判断する」そして「すぐ行動する」という訓練を重ねてきたからこその成功といえるだろう。

 一方で「投資信託」組のrennyさん虫とり小僧さんは、いずれも長期間にわたる定額積立投資がポリシー。コロナ・ショックの大暴落でも、保有資産を大幅に変更・売却することはなかった。逆に、タイミングをよく見て、買い増しを行っていたのが特徴的だ。

 rennyさんがコロナ暴落に際し、最初に打った手は「定期預金を解約し、投資信託の追加購入に充てるため、妻の了解を取得すること」。そして、基準価額が大きく下がったアクティブ投信を買い増し、各投信の積立投資額をしばらくの間増額した。

 虫とり小僧さんが暴落後に行ったのも、下落投信の追加購入だ。3月中旬、コロナ・ショックによる急落で比率が崩れたのを見て、下落の大きかった投信を追加購入。資産評価額は約2割減少したものの、余裕資金額や今後の最大下落幅・下落期間を厳密に想定したうえで冷静沈着に追加投資を始め、ポートフォリオのリバランスを行った。

 危機を察知し、売りという対応でポートフォリオを最適化した「株式投資」組。一方で、投資信託の2人は、「暴落はある意味、絶好のチャンス!」と考えたようだ。特に投資に関する視野が非常に長期で、子供にアクティブファンドを遺産として残すことすら視野に入れているrennyさんは、自身がいいと認めるファンドマネジャーに自身の資産を託すことが人生を通しての投資スタンスとしている。この信念をもとに、信頼を寄せるファンドの買い増しにつながった。

 下落におびえてなかなか積極買いに出られない投資家もいる中、暴落に動揺せず自身の信念に基づいた投資方針がポートフォリオに表れている。波乱相場に流されず、信じたファンドを支持するという、波乱相場でも動じない姿勢は、波乱相場で動揺しがちな投資家がぜひ立ち返りたい原点といえる。