ドルは既に天井を付けている!?

 筆者の見立てでは、米ドルは既に天井を打っているように見える。

 以下は、ドルインデックス先物の週足チャートだが、現在の戻りはエリオットウエーブのB波の可能性が高いと思われる。ドルインデックス先物相場が5波のトップを上抜くまで、この見方は変わらない。ユーロ圏や中国の景気が悪いとは言っても、米国の経済政策とドル相場を考えると、ポリシー・ミックス的にドルを買う理由はない。米国の長期金利は、先行きの不景気を見込んで低下傾向にあり、現在のドル高は株高だけで維持されている。

ドルインデックス先物(週足)と波動カウント

出所:石原順

米国10年国債金利(週足)

出所:石原順

アトランタ地区連銀のGDPNow

出所:アトランタ地区連銀

 昨年2018年まで米国は金融引き締めに動いていたが、トランプ米大統領の口(攻)撃を受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の腰が引けて緩和姿勢に転換している。これは「金利平価説」におけるドル安要因である。

 また、米国の財政出動については昨年で出尽くし、先述したように国境の壁を作る予算もない。

 財政縮小は「マンデルフレミングモデル」のドル安要因。「購買力平価説」ではインフレ率が影響する。貿易戦争の影響や、移民を制限することによってインフレが加速すればドル安につながる。

 債務拡大+金利上昇+ドル安の3つの組み合わせは、ジェフリー・ガンドラックが「危険なカクテル」と呼ぶ「ブラックマンデー2.0」の環境であり、3つがそろえばドル安どころか債券安、株安も加わるトリプル安となる。2019年相場は、どこかでドル安転換が起きてもおかしくない。

米国の経済政策とドル相場

出所:石原順