コア・サテライト戦略でインド株式への分散投資に注目

 上述したように、インドは労働人口増加、平均所得(収入)増加、個人消費支出を中心とする内需拡大、インフラ整備、外資企業の進出(直接投資)増加、生産性改善という好循環で高度経済成長が期待されています。再選を目指すモディ首相は2023年8月、「25年後(英国からの独立後100年となる2047年)までに先進国入りを目指す」と表明しました。

 同首相は、「インドは世界の製造業の拠点に成長しつつある」と述べ、デジタル(IT)化や若者・女性の労働参加を促すことで、ものづくり国家を目指す「メイク・イン・インディア」と「デジタル・インディア」構想を推進しています。こうした成長期待を背景に、中長期の視点でインド株式の投資魅力は続くと考えられます。

 ただ、インド株式への投資を検討するにあたっては、個別銘柄のリスクや比較的高い取引コストの壁があります。そこで、具体的な投資ツールの参考例として、インド経済の成長期待に沿う投資成果を目指すインデックスファンド(ETF:上場投資信託)をご紹介します。

 図表3は、2021年初を起点(100)として「NEXT FUNDSインド株式指数・Nifty50連動型上場投信」(東証コード:1678)の取引価格と日経平均の推移を比較したものです。

 同ETF(運用時価総額:約617億円/管理・運用:野村アセットマネジメント)のパフォーマンスは、ニフティ50指数(インド市場の主要50銘柄で構成される)の堅調にインド通貨ルピーの対円相場堅調(為替差益)が加わり、日経平均よりも優勢であったトレンド(傾向)が分かります。

<図表3>インド株式連動型ETFの優勢が鮮明となっている

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年5月8日)

 現在も進行中である総選挙に向け、モディ首相は政権公約の一つとして「2036年の夏季オリンピック(五輪)開催をインドに招致したい」と表明しました。インドで五輪が開催されれば「南アジアで初」となります。

 誘致に成功すれば、新たな国家目標となりインドのインフラ(社会的基盤)整備が加速する可能性があります。1964年に「アジアで初の夏季五輪」を開催した当時の日本の経済発展を思い起こさせます。

 2026年に開通が予定されているインド初の高速鉄道(ムンバイとアーメダバード間=路線距離は東京・新大阪間よりやや短い508kmで12駅が設置される)は日本の新幹線方式(JRモデル)を導入したものです。

 モディ首相は2016年11月に来日した際、故・安倍晋三元首相と仲良さそうに新幹線(東京~新神戸)に同乗し、そのスピードや乗り心地だけでなく「奇跡の7分」と呼ばれる出発直前の迅速な車両内清掃サービスに感動したと報道されました。

 故・安倍元首相の「トップセールス」が功を奏したこともあり、インドでは日本の新幹線方式を採用した高速鉄道網が主要都市間に次々と拡張される計画で、ビジネス環境の改善と高度経済成長に寄与すると期待されています。

 近年、日本を含む世界の多国籍(グローバル)企業がインドへの直接投資(生産拠点や販売拠点)を拡大していることに加え、アジアにおける間接投資(株式投資や債券投資)を巡るアセットアロケーション(資産配分)でもインド市場の相対的な魅力が注目され海外投資家による買い越しが見込まれています。

 実はインド国内の個人投資家のマネー流入も活発です。SIP(Systematic Investment Plan)と呼ばれる少額からの株式投信を活用したインド株式への分散積立投資が広まっています。インド国民が自国の成長期待を身近に感じている事象として注目されます。

 日本居住者も長期目線に立った「コア・サテライト戦略」(国際分散投資)を構築するにあたり、サテライト部分(新興国株式への投資)にインド株式への長期分散投資を加えていくことは理にかなうと考えています。

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