年明けにみられるS&P500主力株の強弱、四つの注目点

 米国株式に投資するファンドマネジャーや個人投資家の年明けの売買を受け、銘柄別の年初来騰落率(昨年末比の株価騰落率)に強弱がみられます。図表3は、S&P500の時価総額上位10社を時価総額の降順に一覧した上で「年初来騰落率」を示したものです。

 注目点は、四つあります。(1)マイクロソフトが時価総額でアップルを上回り、約2年ぶりに「時価総額世界首位」(約428兆円)に返り咲きました。

 オープンAI社との提携で生成AI(人工知能)とクラウド事業の収益化が期待され、年明けに上場来高値を更新しました。一方のアップルは、中国でのiPhone15の需要鈍化が懸念され、複数のアナリストによる投資格付け引き下げを受け株価が下落しました。

(2)エヌビディアの株価も年明けに上場来高値を連日で更新。年初来上昇率は13.3%となっています。生成AI向け高機能半導体(GPU)のシェアで約8割を占める同社の業績見通しは好調で、年明けに発表した新製品投入も評価されました。(1)と(2)は、「2023年にみられた生成AI相場は2024年も選別的に続く」との期待を抱かせる事象です。

 また、(3)医薬品大手イーライリリー株は年初来で7.9%上昇し時価総額上位10社に浮上しました。昨年11月に承認された「肥満症治療薬」の販売拡大が期待され株価は新年に上場来高値を更新しました。

 一方、(4)EV(電気自動車)大手、テスラの株価は年初来で13.3%下落しています。昨年第4QのEV世界販売台数で中国のEV大手BYDに首位を譲り、中国での値引き販売が伝えられる中、ウォールストリートジャーナル紙が1月6日に「イーロン・マスクCEOは違法薬物を常用している」と報道したことも悪材料視されました。

 世界株式(オールカントリー)の時価総額ウエートで約63%(昨年末時点)を占める米国市場の主力銘柄の物色変化(時価総額の変動)は影響度が大きいとみられ、2024年も引き続き注目したいと思います。

<図表3>年明けにみられるS&P500主力銘柄の強弱に注目

出所: Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年1月17日)

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