FRBがいさめようとしている「市場の早期利下げ期待」
昨年秋以降に市場が織り込んできた「2024年の早期利下げ期待」をいさめるFRB高官の発言が債券安(金利上昇)を介して株価の上値を抑えています。先物市場で試算されるFF金利見通しは「2024年末に4.01%」を予想。0.25%刻みを前提にすると現行水準から計5回の利下げを見込んでいます。
また、市場で注目されている「FEDウオッチ」によると、3月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ確率は約61%、5月FOMCでの利下げ確率は約93%と見込まれています(17日)。利下げ観測の背景としては、景気の鈍化観測とインフレ率(物価上昇率)減速が挙げられます。
図表2は、前週発表された12月のCPIとPPIのコア(変動の大きい食品とエネルギーを除く)物価指数の前年同月比伸びを示したものです。CPIコアの伸びは+3.9%と2021年5月以来の伸びに減速。先行指標とされる川上部門の物価動向を示すPPIコアの伸びは+1.8%と、2021年1月以来の2%割れに減速しました。
基調としてのディスインフレ(物価上昇率減速)を受け、シカゴ連銀のグールスビー総裁は12日、「インフレを目標(2%)に向けて低下させる取り組みで良好な進展が見られる」と述べました。
ただ、住宅賃料、帰属家賃、賃金、サービス価格の伸びに粘着性がみられ、中東情勢悪化を受けた原油相場の上昇次第でガソリン価格に反転上昇リスクがあり、金融当局には「市場の早期利下げ期待」を押し戻したい意向がみられます。
実際、前回(昨年12月)FOMCは「2024年の利下げ回数は3回」(予想中央値)と見込んでいました。
1月25日に発表される昨年第4Q(10-12月期)GDP(国内総生産)統計、26日のPCE(個人消費支出)物価指数、次回FOMC(30~31日)やパウエルFRB議長の記者会見での発言(トーン)などが市場の政策金利見通し変化を介して債券市場と株式市場の変動に影響を与えることが警戒されています。