食糧価格は下落するも長期視点で高止まり

 ここから、もう一つ、原油価格が下落している中で生じている、不安要素を述べます。以下のグラフは、FAO(国際連合食糧農業機関)が、世界全体の食糧価格を指数化した「食糧価格指数」の推移(変動が激しい食用油を除く4種平均)です。

図:食糧価格指数の推移(食用油を除く4種平均)

出所:FAO(国連食糧農業機関)のデータより筆者作成

 食糧価格指数は下落しているのでしょうか、上昇しているのでしょうか。足元、やや下落したとはいえ、ウクライナ危機発生直前の水準までは下落していません。また、新型コロナがパンデミック化した直後に比べれば、およそ1.5倍の水準です。

 ウクライナ危機起因の供給減少懸念が根強いこと、金融引き締めは始まっているものの、金融緩和時に放出した資金がじゃぶじゃぶな状態が続いており、投機資金が流入しやすい状況にあること、天然ガスや石炭の価格高騰により電力コストが増えていること、異常気象で生産状況が不安定な地域があることなどが、食糧価格高騰の背景に挙げられます。

 原油価格が下落していても、食糧価格は高止まりしたままです。まだまだ世界に、大きな不安が残っていると言えます。足元のインフレは、原油高だけで起きているのではありません。