米国経済の「景気後退確率」は高まっている?

 インフレ圧力、FRBの金融引き締め、地政学リスクの悪化などで米国がスタグフレーションに陥るとの悲観論もあります。そこで、市場が「米国経済が景気後退入りする可能性をどの程度とみなしているか」に注目したいと思います。

 図表4は、エコノミストが予想する「1年以内に米国が景気後退入りする確率(平均値)」と米国株(S&P500種指数)の推移を示したものです。2008年秋の不動産バブル崩壊時や2020年春のパンデミック危機では景気後退確率が急激に上昇し株価を大きく下落させた経緯がわかります。

 一方、現在の「1年以内の景気後退確率」(United States Recession Probability Forecast in 1 year)をみると20%(2割)に過ぎないことがわかります。もちろん、予期できない突然の悪材料(例:新しい疫病によるパンデミック、ウクライナ情勢やロシア危機の深刻化)を楽観視すべきではありません。

 また、長期市場実績を振り返ると、債券市場の長短金利が高い水準で逆転(逆イールド化)したことが「景気後退の前触れ」となってきたことが知られています。こうした場面では、株式だけでなく高利回り社債(非投資適格級社債:ジャンク債)市場の変動も激しくなり、景気後退入りする可能性が高まった事例もありました。

 筆者は、米国が当面も景気後退に陥ることはなく、株式市場については増収基調と生産性改善を原動力とした業績相場が続くと見込んでいます。

<図表4>米国経済の景気後退確率は2割程度

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2008年初~2022年3月18日)

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