米債市場は金融引き締めをどこまで織り込んだ?
昨年秋から警戒されてきた不安要因として「FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げサイクル入り」や「金融引き締め加速」が挙げられます。図表2は、最近の米債市場における短期金利(2年国債利回り)と長期金利(10年国債利回り)の推移を示したものです。政策金利の行方に敏感な短期金利が急上昇してきたことがわかります。
3月FOMCでFRBは「年内に計7回の利上げ」を示唆しており、こうした利上げペースを織り込んだ利回り形成が進んできたと言えるでしょう。とは言うものの、過去の利上げサイクルにおける株価推移を振り返ると、景気回復に伴う「業績相場」の色彩が濃かった状況もわかります。
実際のところ、1950年代以降の計12回の利上げサイクルで米国株(S&P500)のパフォーマンスがどうだったかを振り返ってみると、米国株が比較的堅調だった(年率平均で+9.4だった)ことがわかります。12回の利上げ局面のうち株式リターンがマイナスだった唯一の例は、1972年から1974年までのスタグフレーション(インフレと景気後退の同時進行)環境下でした。
<図表2:利上げサイクルを織り込む米国債券市場>
図表3は、前々回の利上げ局面(2004年から2006年まで)と前回(2015年から2018年まで)の政策金利と株価(S&P500種指数)の推移を振り返ったものです。FRBは2004年6月から計17回の利上げを実施。2015年12月からは計9回の利上げを実施しました。こうした利上げ局面でも、株価は変動しつつ堅調なトレンドを続けたことがわかります。
当時も、「利上げができるほど経済状況が良くなった」、「利上げを実施することでインフレ圧力を抑え景気を安定化させる」との見方が広がりました。FRBが利上げを続けるにしても、FOMCが示唆する「中立的な政策金利水準(2.5%)」に至るのは2023年以降と想定されます。
市場は、低金利環境下の「金融相場(流動性相場)」から「業績相場(業績拡大を期待する相場)」に移行しつつあると考えられ、金融政策正常化を巡る過度の悲観に振り回されるのは得策ではないと思っています。