株式と債券の「恐怖指数」が同時上昇したが

 ウクライナとロシアを巡る地政学リスクが混沌(こんとん)化するなか、米国市場は不安定な動きを続けています。その要因として注目されるのが「恐怖指数」(オプション市場で試算される市場参加者の価格変動予想)です。

 図表3は、米国の債券市場と株式市場の恐怖指数が同時的に上昇した状況を示したものです。「米国債券市場の恐怖指数」とされるICE BofA MOVE Indexは一時130ポイントを突破し、2020年3月以来の高水準に上昇。

 FOMC(米連邦公開市場委員会/15~16日開催)を来週に控える一方、スタグフレーション懸念を織り込み切れない債券市場の混乱を示しました。一方、「米国株式市場の恐怖指数」とされるS&P500 Volatility Indexも上昇し、地政学リスクと先行きの景況感悪化に揺れて相場の安定が見込みにくい地合いを示しています。

 報道によると、英米の情報機関と軍特殊部隊の混成チームがウクライナに派遣され、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の首都キーウ(キエフ)からの退避に向けた準備を進めていると報道されました。同大統領以下、政権幹部らがNATO(北大西洋条約機構)域内国などに脱出し「亡命政権」を樹立することを想定しているとされます。

 亡命政府樹立、停戦合意、ロシア危機の緩和、資源エネルギー相場の安定などをみるまで、恐怖指数は落ち着きを取り戻さず、債券価格(利回り)や株価を乱高下させそうです。

 とは言っても、市場実績を長期で振り返ると、相場は上方にも下方にも「オーバーシュート」(振れ過ぎ)が多くみられてきました。短期的には「視界不良」の相場が続きそうですが、中長期的な視点で振り返ると、相場の下方へのオーバーシュートが「押し目買い、積み増し買い」の好機となる可能性は高い。長期的な視野に立った投資戦略を維持したいと思います。

<図表3:株式と債券の恐怖指数が同時上昇した>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年初~2022年3月9日)

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