商品インフレでスタグフレーションの影が忍び寄る

 西側諸国のロシアに対する強力な経済・金融制裁措置の影響を織り込み、ロシアの株価、通貨ルーブル、債券は同時的に暴落しました。S&P、ムーディーズ、フィッチといった信用格付け会社は、ロシア国債(ルーブル建て/外貨建て)の信用格付けを6~8段階引き下げ「投機的格付け」(Under Investment Grade)にしました。

 1998年8月のロシア危機以来のデフォルト(債務不履行)リスクをほうふつさせる不安要因となっており、ロシアへの投融資が多いとされる欧州系金融機関の株価は信用収縮不安で急落しました。

 また、ロシアからの資源エネルギーや小麦など穀物の輸出は急減すると見込まれ、供給制約は一段と悪化。商品市況の需給が引き締まるとの見方から、商品価格全般が急上昇しています。図表2は、S&PゴールドマンサックスCI(商品価格指数)、米国株式、米国債券のパフォーマンスを相対的に示したものです。

 商品価格の急上昇を受け、市場参加者がインフレと景気停滞が同時進行するスタグフレーションの影を警戒し始めたことも市場の金融ストレスを押し上げています。

<図表2:ロシア危機で商品価格が一段と上昇した>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年10月初~2022年3月9日)

 ロシアのノバク副首相は3月7日、欧米がウクライナ侵攻を巡り「ロシア産原油の輸入を禁止すれば、原油価格が1バレル300ドルを超える水準に上昇する」と述べ、「ロシア産原油を拒否すれば、世界市場は壊滅的な打撃を受ける」と指摘。「予測もできないほどの原油高に見舞われる」とし、西側の経済・金融制裁の見返りが商品相場の急騰による経済的混乱であると脅しました。

 これにより、原油相場(WTI先物)は1バレル124ドルを突破して続伸(8日)。ただ、9日にはUAE(アラブ首長国連邦)がOPEC(石油輸出国機構)加盟国に増産を呼びかけていると報道され、原油相場は急反落しました。原油相場の下落を受けて、米国株価は急反発し、翌日(10日)の日経平均も急反発するなど不安定な値動きとなっています。