李克強―ドラギ電話会談が意味すること

 そもそも、私がこの会談に特別な意味を見出した背景には、中国のEUに対する強い不満が横たわっています。発端は新疆ウイグル問題です。

 3月、EUの執行機関である欧州委員会が、新疆ウイグル自治区での人権侵害に加担したとされる中国当局者に対して、資産の凍結と渡航の制限を課すという制裁措置を発動しました。これに続いて、米国、英国、カナダも同様の制裁を科しています。

 米国がバイデン政権に移行してからというもの、新疆ウイグル問題への対応をめぐって、西側諸国間の政策協調が強まっています。それを象徴するように、5月初旬、英国・ロンドンで開かれたG7外相会談は、中国の新疆ウイグル自治区における人権侵害を名指しで批判。

 会談後に発表されたコミュニケ(声明書)では、「我々は、新疆およびチベットにおける人権侵害、特にウイグル族その他の民族・宗教上の少数派が標的とされていること、そして大規模な『政治的再教育収容所』のネットワークの存在、強制労働制度および強制不妊に関する報告について、引き続き深く懸念する」と明記されました。

 これに対し、中国政府は「中国に対する事実や根拠に基づかない批判であり、中国の内部事務に公然と干渉する、歴史に逆行した集団政治である」(5月6日、中国外交部定例記者会見、汪文斌[ワン・ウェンビン]報道官)と強烈な非難を表明しています。