米国株式の強気相場の「賞味期限」は近いのか

 日本株の動向に大きな影響を与える米国株について、「バブル崩壊直前」とか「賞味期限が近い」との見方があります。一方、長短金利の水準や流動性の動向から、「短期的調整を交えつつも堅調傾向を続ける」との見方もあります。本稿では後者に注目したいと思います。

<図表4:米国の長短金利はいまだ低水準で順イールド>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2000年初~2021年2月)

 図表4は、米国の短期金利(政策金利に敏感とされる2年国債利回り)、長期金利(10年国債利回り)、実質長期金利(長期金利-期待インフレ率)、マネーサプライの伸び(M2の前年同月比)を示したものです。

 経済活動の正常化観測を背景に、債券市場が金融政策の変更(利上げや量的緩和縮小)を警戒したことが、今回の長期金利上昇の背景とされています。こうしたなか、重要指標として「イールドカーブ」(債券市場の利回り曲線)に注目したいと思います。

 一般的に、順イールド=長短金利差(長期金利-短期金利)がプラスの状態は、景気回復(拡大)基調を示唆するとされます。

 一方、逆イールド(長短金利差=マイナス)が発生すると、市場が景気や業績の悪化を警戒し株式売りが強まったことがありました。

 例えば、2000年当時の「IT(ドット・コム)バブル崩壊前」や2007年当時の「不動産バブル崩壊前」は、短期金利と長期金利が高水準で逆イールドに転じた(長短金利差がマイナスとなった)ことが知られています。

 高水準での長短金利逆転を契機に、株式が景気後退入りを織り込んで弱気相場入りした事例を示しましたが、現在は長短金利ともいまだ歴史的低水準。

 長短金利差はプラス(順イールド)を維持しています。実質長期金利もマイナス圏(▲0.75%)で推移しています(3月4日)。さらに、米国市場の流動性を示すマネーサプライ(M2)の前年同月比伸び率は25%超となっています。

 バイデン政権は1.9兆ドル(約200兆円)規模の経済対策に続き、大型インフラ整備計画を実施して雇用回復の最大化を目指す方針です。

 長期金利上昇に伴うコストを上回る業績回復が株式市場の上向きトレンドを支えると考えています。業績の回復余地を加味すると、米国株の弱気相場入りを予想するのは時期尚早と思われます。

 したがって、日本株の弱気相場入りも現時点で見込んでいません。目先的には、3月16~17日にFRBが開催するFOMC(米連邦公開市場委員会)でパウエル議長が表明する金融政策方針と債券市場の反応に注目したいと思います。

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