原油価格、OPEC減産でも上昇せず。その理由は?

 次に、原油相場について解説します。

 原油相場は、金相場のように上値を目指す条件を考えられる事態になく、何よりも、歴史的にまれにみる上昇要因があるのにも関わらず、なぜ、価格が上昇していないのか? について考えなければなりません。

 4月12日(日)に、第10回OPEC(石油輸出国機構)・非OPEC閣僚会議が行われました。(前回のレポートで、4月9日(木)にはじまった第9回の同会議が4日間行われたと書きましたが、先週、OPECのウェブサイトに、12日(日)の会議は第10回の同会議だった旨のニュースリリースが公開されました)

 この会合で、OPECプラス(サウジアラビアを筆頭としたOPEC13カ国と、ロシアを筆頭とした非加盟国10カ国の合計23カ国)は、日量970万バレルという過去稀にみる規模の生産削減を実施することを合意しました。(合意内容の詳細は前回のレポートをご参照ください)

 その後、報道では、米国やカナダなどのシェール主要国も削減に参加する、中国などの消費国は削減に準ずる策を講じる、その結果、日量970万バレルだった削減規模が“世界協調”の色合いを強め、実質的に日量1,500万バレル程度の削減に発展したとされています。

 サウジの原油生産量は3月時点で日量1,000万バレルですので(OPEC月報より)、サウジ1.5個分の原油生産量が地球上からなくなる計算になります。このような、すさまじい規模の減産であるにも関わらず、なぜ、原油相場は上昇しないのでしょうか?

 “上昇要因をはるかにしのぐ下落要因があること”、そして“上昇要因自体に、さまざまな欠点があること”が挙げられると筆者は考えています。

上昇要因はほぼ“期待”のみ、下落要因は“懸念”+“実態”

 以下は、筆者が考えた足元の原油相場の環境です。上昇要因、下落要因の両方が存在することがわかります。

図:原油相場の足元の環境

出所:筆者作成

 全体的には、上昇要因は思惑・期待先行の面が強いとみられます。やってくれそう、期待できそう、消費も増加する? 困難な条件が解消する? などです。希望的観測の要素を含んでいるとみられます。

 一方、下落要因は思惑・懸念に関わる要素もありますが、“実態”が伴っています。その実態とは、“日量1,500万バレルをはるかに超える規模で消費が減少した事実”です。この点については、前回の「新型コロナで金・原油、それぞれで国際協調の影響あり。ともに価格は上昇か!?」で、述べました。

 世界の石油消費量がリーマン・ショックの比ではないほど実際に減少しているデータは、衝撃すら覚えます。消費量の減少規模が、減産規模を大きく上回っている点は、広く報じられていますが、筆者はこの点以外に、減産が合意したにも関わらず、原油相場が上昇しない要因があると考えています。

 下落要因の中の思惑(懸念)を強める要素と、上昇要因の中の思惑(期待)を弱める要素が存在することです。