投資先は米国しかない。しかしそれは相対的にというだけである!

 アリアンツのモハメド・エラリアンの米FOXニュースのインタビューが今の相場のすべてを語っている。以下はそのインタビューの抜粋である。

Q) マーケットはコロナウイルスを心配するべきなのかそうでないのか決めかねているように見える。われわれは心配すべきか?

A) マーケットによるだろう。もし米国の株式市場についてならば問題ない。コロナウイルスによる不確実性を考慮すべき一方、早くも戻って再び高値をとっている。

 しかし、債券市場、あるいは商品市場は心配すべきである。これらはまだ流行前のレベルに戻っていない。つまりすべては圧倒的な流動性である。流動性が株式市場をそのほかのマーケットだけではなくファンダメンタルズからかい離させている。

Q) つまり言い換えると、株式市場には資金が溢れかえっているので、投資家はパンデミックのようなささいなことを気にしていないということか。

A)そうだ、これにはいくつか理由がある。一つはこれまで経験してきたショックの多くが一時的なものであり、すぐに元に戻ることを証明してきた。

 9月にサウジアラビアの石油施設が攻撃されたことやイランのソレイマニが殺された攻撃を思い出してみればいい。懸念は多かったが、マーケットはそれらが一時的ですぐに逆戻りすると見ていた、そしてそれは正しかった。

 次に、マーケットは中央銀行を信頼するという状態にあった。中央銀行が信頼できるならば、落ちたところはすべて買いだ。これがFOMO(Fear of Missing Out)効果、つまり乗り遅れる恐怖である。だからセルオフがあるたびに、そこが買い場となる。これらによってマーケットはファンダメンタルズとかい離した状態になっていると思う。

Q) 中央銀行がいつまでこのブルマーケットをサポートし続けることができるのか重要な論点だ。昨年秋、欧州の景気について懸念していると言っていた。ECB(欧州中央銀行)はリセッションを避けることができるのか、あるいはまだレーダーに入っているのか。

A)ともかく、数字はよくなっていない。今週、ドイツの産業に関する指数が2.1%減少した、これはこの10年で最大の下落である。加えて、先行きの見通しもかなり悪かった。

 つまりドイツはリセッション入りだろう。ドイツは欧州経済のけん引役であったが、欧州という列車の最後部になってしまった。大変心配している。

 ECBは何かできるのか。もちろんトライするだろう、しかし何もできないだろう。彼らはマイナス金利を導入した。彼らの金融政策は「暖簾に腕押し(金融政策の空振り)」になっているだけでなく、逆効果になっていることが懸念されている。

 マイナス金利は、市場経済のダイナミズムを食いつぶしてしまう。そして欧州の人々はそれを心配している。つまりECBは何かトライはするだろうが、経済の見通しを根本的には変えない。より包括的な政策対応が必要だろう。

ユーロ/ドル(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:石原順インディケーター(楽天MT4)

ユーロ/ドル(4時間足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

出所:石原順インディケーター(楽天MT4)

Q) 一方で米中の貿易戦争は緩和しつつある、これについてはどう見ているか

A)良いことだ、一時停戦となった、しかしフェーズ2に進む方にはベットしない。むしろ緊張が再びエスカレートすることになるかもしれないと考えている。

Q) もう一つ今週、米国の政治で大きなヘッドラインがあった、マーケットは興味ないようだが、どう思うか

A)確かに興味がない、良い理由とあまり良くない理由がある。良い理由として、議論が早いことだ。現在進行形の不確実性があるときはポジションを取りたくないだろう。

 2つ目の理由は、これはよくない理由だが、マーケットは流動性にとらわれ過ぎていて、政治であろうが、地政学であろうが、経済であろうが、それ以外のことは気にしていない。コロナウイルスが良い例だろう。それは最も影響の大きい地域で始まり、そして拡大し始めている。

 バーバリーはセールスが75%落ち込んでいる。これは突然のストップである。フィアットでさえ、サプライチェーンの混乱を理由に欧州の工場の一つを閉鎖するという。航空会社も運行を取り止めている。こうした突然のストップのダイナミクスには注意すべきだろう。

Q) 世界経済において資産が高すぎずオポチュニティ(投資機会)があるとすればどこか?

A)経済的にはまず、一つ明るい点がある、それは米国だ。雇用統計は米国の状況が良いということを確認するものだった。

 新たに22万5,000の仕事を生み出しただけではなく、賃金も早いペースで上昇している。労働参加率と雇用者数のレシオはともに上昇した。良いニュースだ。米国経済は好調だ。米国の資産は、世界のそのほかの地域と比べると相対的にまだ魅力がある。

 しかしそれは相対的にというだけである。資産価格やリスク資産価格、それは株式であり、あるいは社債であるが、明らかに高い水準である。

出所:フォックスビジネス「US-China trade tensions will escalate again: Mohamed El-Erian」

 エラリアンは米国しか投資する先はないと言っているものの、それはあくまで相対的(比較感の問題)なものであって、手放しで推奨できるような絶対的なものではないということだ。