米シェール主要地区の原油生産量は2020年に鈍化する?

 2020年は、米国のシェール主要地区の原油生産量の増加傾向が鈍化する可能性があります。以下のグラフは、米シェール主要地区における、掘削済井戸数と仕上げ済井戸数の推移を示しています。

図:米シェール開発指標と原油価格

出所:CMEおよびEIA(米エネルギー情報局)のデータより筆者作成

 米シェール主要地区における開発工程は、探索・開発・生産の3つに分けることができます。工程の真ん中にある「開発」は、前工程の「掘削」と後工程の「仕上げ」に分けられます。

 掘削とは、リグ(掘削機。生産をする施設ではない)を稼働させて井戸を掘る作業です。仕上げとは、原油の生産を開始するために行われる、最終的な作業のことで、具体的には、掘削した井戸に対し、壁面をセメントで固め、水と砂と少量の化学物質を高圧で注入し、井戸の先端部分のシェール層を破砕し、原油を抽出できるようにすることです。

 生産に最も近い工程である仕上げは、全工程の中で最もコストがかかると言われています。そのため、仕上げを行うことは、後に原油の生産を開始し、それを売って収益を上げることを前提としていると言えます。

 12月16日に公表されたデータを参照した以下のグラフからは、先月(11月)、仕上げが完了した井戸の数が、やや多めに減少したことが分かります。原油生産を開始することを前提として行われる「仕上げ」が完了した井戸の数が減少していることは、将来の同地区の原油生産量の減少の一因になると考えられます。

 とはいえ、以前の「OPEC総会直前レポート!米シェール生産増加は、OPEC減産継続の最大の動機?」で述べたとおり、“質”にあたる生産効率を示すデータは引き続き上昇傾向にあるため、“量”にあたる井戸の数が減っても、必ずしも生産量が減少するとは限りません。

 しかし、少なくとも“量”に、やや黄色信号が灯っている点には、引き続き注目していかなくてはならないと思います。この“量”の減少が本格化すれば、2010年ごろから続く米シェール主要地区の原油生産量の増加は、2020年に“鈍化”する可能性があります。

 本レポートで述べたとおり、2020年は、“トランプ大統領が再選を狙う”米大統領選挙があること、アラムコの関係者らの原油価格上昇への思惑が強まること、OPECが60周年を迎えること、そして、米シェール主要地区の原油生産量の増加が鈍化する可能性があることなど、原油市場にとって、例年以上に話題が豊富な年と言えます。

 引き続き、本レポートで原油価格の動向や変動要因、トピックを書いていきます。

 本年もご愛読いただきありがとうございました。来年も引き続き、どうぞよろしくお願い致します。

※12月30日(月)の週刊コモディティレポートはお休みいたします。2020年は1月6日(月)から配信をいたします。