トランプ大統領が誘発する、原油価格の下落という名の“減税”の可能性

 トランプ大統領が大統領選挙に向けて、米中貿易戦争を具体的に鎮静化させたり、米国が関わるイラン、ベネズエラ、北朝鮮などの国々の問題を解決したりしながら、一般の有権者が景気回復を実感しやすい株価の上昇と失業率の低下を実現するとみられる点については、以前の「2020年の金・プラチナ最高値をズバリ予測!」で述べました。

 この点は、米国や世界全体の石油消費増加の期待を高めることにつながる、正に、2020年に想定される原油価格の上昇要因と言えます。

 また、トランプ大統領が利下げを行うよう圧力をかけているFRB(米連邦準備制度理事会)が実際にさらなる利下げを行えば、景気回復により石油消費増加の期待が高まったり、ドル安により他通貨建ての原油に比べ、ドル建ての原油に割安感が生じたりするため、ある意味この点も、トランプ大統領起因の原油価格の上昇要因と言えます。

 一方、先述のとおり、トランプ大統領が再選を目指して施策を行えば行うほど、原油相場に下落圧力がかかる場合もあります。

 上値のメドを過去12カ月平均ベースで65ドルとしましたが、実際には、同価格がおよそ58ドル(グラフでは57.97ドル)を上回り、高値警戒水準に入ると、同大統領は原油価格の上昇やそれを主導するOPECプラスをけん制する可能性があります。

 先述のとおり、トランプ大統領は、82ドルに言及したツイートの中で、原油価格の下落は“Like a big Tax Cut for America”、つまり“米国にとって大きな減税効果”だとしました。一般の有権者にとって、ガソリンなどの石油製品の価格下落は、減税のようなメリットがあると考えているわけです。

 トランプ大統領にとって、大統領候補を選出する代理人や大統領に直接投票をする選挙人を選出する一般の有権者は、再選を実現する上で非常に重要な存在です。このため、原油価格の下落という名の減税を実施したいと考えている可能性があります。

 トランプ大統領が行うとみられる一般の有権者向けの施策である、株価を上昇させる施策や、失業率を低下させる施策は原油相場の上昇要因であるものの、石油製品価格の低下という減税に準じる策は原油相場の下落要因と言えます。

 このため、2020年の原油相場は、上昇しても、下落しても、ある一定の水準を限度とする可能性があるわけです。