サウジアラムコ関係者の思惑に注目。サウジを筆頭としたOPECは発足60周年

 米大統領選が最大の変動要因と考えていますが、それ以外に、OPECプラスの協調減産や米国の供給圧力、米中貿易戦争の動向、サウジアラムコ株の関係者の思惑など、考慮しなければならない要素が複数あります。

 以下の資料は、米大統領選挙の他、「供給」「消費」「アラムコ関係者」の要素を、スケジュール感とともに、想定される影響を上昇要因(赤)・下落要因(黄)別に書いたものです。

図:2020年の原油相場をみる上でのポイント

出所:筆者作成

「アラムコを2兆ドル企業に!原油価格を維持したいサウジの政治圧力と追加減産」で述べたとおり、サウジアラムコは世界最大の石油会社であり、かつ石油開発の上流部門(原油の生産など)をメインとする会社です。

 “サウジアラムコ関係者”を、2020年の原油相場の変動要因に加えたのは、12月11日のサウジ国内市場に上場したことを機に、同社の株価を上昇・維持するために、原油相場を維持したいと考える人や組織が新たに生まれたと考えたためです。

 以下はアラムコの株価の推移です。

図:サウジアラムコの株価

単位:リヤル
出所:ブルームバーグより筆者作成

 サウジ国内市場での最終的な売り出し価格が12月5日(木)(OPEC総会と同日)に、IPO(株式の新規公開)予定額の上限である32リヤルで決定し、11日(水)に上場しました。上場した日は制限値幅の上限に達し、その後、数日間は時価総額2兆ドルの目安である37リヤルを超えて推移していました。

 しかし、上場から1週間が過ぎた18日(水)ごろから37リヤルを下回る値動きとなっており、22日(日)には34.9リヤルという上場来安値をつけました(サウジなど中東諸国の主要な株式市場は、日曜から木曜に取引が行われています)。

 売り出し時点と条件が変わらなければ、アラムコ株は、サウジ国内の個人投資家と認められた一部の金融機関のみが売買できます。

 アラムコ株を保有しているこれらの投資家はもちろん、アラムコを実質的に保有しているサウジアラビア政府、そして今後、アラムコ株を(東京を含め)サウジ国外の証券市場で取引ができるようにし、その際に、手数料を得たいと考えている大手の金融機関などのアラムコ関係者らは、アラムコの株価が下落することを望まないでしょう。

 現在は、IPO後の過熱感が去っている最中と考えられるものの、今後はやはり、アラムコのさまざまな関係者らは、同社の株価が上昇することを望むと考えられます。同社が石油会社である以上、同社の株価が上昇することを望むことは、原油価格の上昇を歓迎することを意味します。

 この点は、アラムコの上場を機に、原油市場に、新たな価格上昇要因が生まれたことを意味すると、筆者は考えています。

 また、1960年9月に発足したOPECは、2020年9月に発足60周年を迎えます。サウジをリーダー格とするOPECとしても組織が団結していることを強調するチャンス(強調しなければならないタイミング)です。

 仮に、2020年9月時点で、協調減産が行われていなければ、市場はOPECが団結していないとみなす可能性があります。60周年を団結した、市場が好感する状態で迎えるには、少なくとも、9月時点でも協調減産を行っている必要があります。

 この点は、アラムコの株価上昇につながる話であるため、サウジとしては何としてでも、4月以降も(現時点では協調減産は2020年3月に終了する)、そして60周年を迎える9月時点でも、協調減産を実施するために調整を行うとみられます。