リグ減少でも米シェールの生産が増えるのは、生産技術の向上、DUCの取り崩しのため

 以下の図は、米国の原油生産量と米国内のEIA(米エネルギー省)が提唱するシェール主要地区(7地区)の原油生産量を示したものです。

 図:米国全体および米シェール主要地区の原油生産量(7地区合計)

 

単位:百万バレル/日量
出所:米エネルギー省(EIA)のデータをもとに筆者作成

 2019年9月の同地区の原油生産量は7地区合計で日量883万バレルでした。7カ月連続増加です。

 EIAの月次短期見通しでは、9月の米国全体の原油生産量が日量1,259万バレルだったため、同月の米国全体の原油生産量に占める米シェール主要地区の原油生産量の割合は70.2%でした。

 仮に、月次短期見通しにある2019年10月~2020年12月までの、米国の原油生産量の見通しの70%分を、同期間の毎月の米シェール主要地区の原油生産量の見通しと推計します。

 この推計では、米シェール主要地区の原油生産量は、2020年12月時点で日量939万バレルとなります。日量1,000万バレルには届きませんが、統計史上最高です。

一方、最近、“稼働リグ数が減少しているので、米国の原油生産量がなぜ増加しているのか?”という疑問を持たれる方がいます。この点について、質と量、両面で説明します。

「質」については、シェール主要地区の新規1油井当たりの原油生産量を参照します。米シェール主要地区において、生産開始から数カ月間、1つの油井がどれだけ原油を生産しているのか、というデータです。

図:米シェール主要地区の新規1油井あたりの原油生産量(7地区平均)

 

単位:バレル/日量
出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

 一つの油井から採れる原油の量が増加傾向にあります。これはまさに“質”が向上していることを示すもので、原油生産量の増加要因と言えます。

 技術革新が進み、より多くのシェールを含む層を効率よく発見できるようになったこと(効率の悪い井戸を掘らなくなったこと)、井戸は一つでも地中で坑道を何本にも枝分かれさせて掘削するようになったこと(一つの井戸で、従来の複数本に相当する井戸の生産が可能になったこと)などの変化が、近年、目立つようになったと言われています。