米シェール生産増加、OPEC減産緩和で、世界の石油在庫は再び増加中

 12月の会合で協議される来年4月以降の減産について、仮に延長されるとなった場合、何がその目的となるのでしょうか?

1.産油国の財政改善に直接的に関わる原油相場を上昇させるため(アラムコのIPOにも効果あり)
2.原油相場の急落を防ぎ、株式や通貨などの市場に混乱を生じさせないようにするため
3.米国の原油生産量が増加する中、世界の需給バランスが緩むのをくい止めるため
4.過剰に積み上がった世界の石油在庫を減少させるため
5.減産という同じ行為を行うことで、OPECプラスの組織力を維持・強化するため

 上記の5つを分類すれば、「原油価格」(1・2が関連)「需給」(3・4が関連)「組織」(5が関連)となります。

 そもそも、OPECプラスの減産だけが原油相場の変動要因ではないため、減産の延長だけで「原油価格」の目的を100%達成することができるかは疑問が残ります。

 また、産油国は減産によって原油価格の上昇を望みますが(特にサウジはアラムコのIPOに影響が大きいため、なおのこと)、成熟した株式市場や通貨市場を抱え、石油の消費量が多い先進国では減産延長によって原油相場が下支えされる(少なくとも急落しない)ことを望みます。

 2014年半ばから2016年後半まで発生した、原油相場の急落・低迷(いわゆる逆オイルショック)時に、株価が大きく下落したような事態を避けたいために、減産を望むわけです。

 原油相場が上昇した場合、石油を大量に消費する先進国にとって、原材料コストの上昇につながります。このため、先進国では、原油相場の上昇は川上に権益を持つ石油会社や石油のトレーダーなど特定の企業・人物以外は、基本的には望みません。

 実際に減産延長を決定し、実施するのは産油国であるOPECプラスですが、OPECプラスにとって重要な原油の買い手である消費国と、思惑が完全に同じになることはないわけです。

 OPECプラスは、重要な原油の買い手に配慮すれば、原油価格を急騰させない、かつ急落もさせない、つまり実際のところ、「原油価格」については、“原油相場の安定化”が減産延長の目的になるのだと思います。