石油の消費量は2020年12月にもさらに増加の見込み

 石油の「需給」について、これに関連する、世界の石油の需給バランス、世界の石油の在庫を確認します。

 以下の図は、世界の石油の需給バランスと、石油消費量および供給量です。世界の石油の供給(青線)消費(オレンジ線)、そして供給から消費を差し引いた需給バランス(棒グラフ)です。

 図:世界の石油供給量と消費量(右軸)、および需給バランス(左軸)

 

単位:百万バレル/日量
出所:米エネルギー省(EIA)のデータをもとに筆者作成

 2018年春ごろから激化した米中貿易戦争、そして英国のEU(欧州連合)離脱問題、東アジア情勢の混迷など、世界には複数の懸念される材料があり、これらの懸念によって、世界の景気が大きく鈍化が進行し、石油の消費が減少しているとの声が聞かれます。

 しかし、オレンジ線のとおり、“世界全体”では、石油の消費量は米中貿易戦争の間も増加し、2020年12月にかけてさらなる増加が見込まれています。

 ですが、2020年は多くの月で供給過剰になることが見込まれています。これは、供給が増えることが見込まれているためです(後述しますが、今後も、米国の原油生産量の増加が見込まれています)。

 また、以下は需給バランスが供給過剰の時に増加する傾向がある、石油在庫です。

図:OECDと米国の石油商業在庫

  

単位:百万バレル
出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

 OPECプラスは、過剰に積み上がったOECD(経済協力開発機構)石油在庫を削減することを大義名分とし、2017年1月以降、協調減産を実施してきましたが、2018年6月の会合で減産を緩和(削減量を減らす)したことが一因となり、同月以降、在庫は増加する傾向にあります。

 OECD石油在庫の一部である米国の石油在庫が増加しているのは、米国の原油生産量が増加していることに関わりがあります。

 もし仮に、需給バランスの供給過剰、石油在庫の増加がみられる中、OPECプラスが減産をやめた場合、どうなるでしょうか? 減産が終われば、需給バランスが緩み、石油在庫が増加し、原油市場は大きく下落する可能性があります。