世界が注目する、日本のアニメ・映画作品

 俳優の真田広之さんがプロデュース・主演を務めたFXのドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』が、現地時間9月15日、米国テレビ界の「アカデミー賞」ともいわれる最高峰の賞「第76回エミー賞」にて、作品賞・主演男優賞・主演女優賞をはじめとした主要部門を総なめにしました。

 エミー賞史上最多18部門を制覇し、日本人の受賞者も史上最多9名となる歴史的な快挙を成し遂げました。この作品は、「トップガン マーヴェリック」の原案者が製作総指揮を執ったことでも有名です。

 真田さんは、英語のスピーチのあと、これまで時代劇を支えてくれた先人ら諸先輩方に日本語で改めて感謝と御礼を述べました。時代劇をはじめとした日本文化が、エミー賞という輝かしい舞台で高い評価を得たことを全世界に日本語でスピーチした姿は、非常に印象深いシーンとなりました。

 2024年は世界の名だたる賞レースで日本の作品が数多くノミネートされ、受賞という栄冠を勝ち取っています。オスカーという名称でも知られている映画賞の最高峰であるアカデミー賞では、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞を、山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」が視覚効果賞をそれぞれ受賞しました。

 小津安二郎さんや黒澤明さん、北野武さん、宮崎駿さんなど日本のアニメや映画作品には昔から高い評価を受けていましたが、改めて日本のアニメや映画に対する世界からの関心が高まりつつあるようです。

日本ファンを増やせ!クールジャパン戦略とは?

 ということで、今回は、日本のアニメや映画関連にスポットを当てたいと思います。2010年ごろの経済産業省の取り組みから始まり、2012年12月に戦略担当大臣が置かれた「クールジャパン戦略」です。

 2008年のサブプライムショックあたりから株式投資を行っていた人にはなじみがある言葉かもしれませんが、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を契機にここ数年で株式投資を開始した方からすると「クールジャパン戦略??」でしょう。

 簡単にご説明しますと、クールジャパンとは、世界から「クール(かっこいい)」と捉えられる(その可能性のあるものを含む)日本の魅力である食、アニメ、ポップカルチャーなどに限らず、世界の関心の変化を反映して無限に拡大していく可能性を秘めたさまざまな分野を世界に発信することです。

 日本のブランド力を高めるとともに、日本への愛情を有する外国人(日本ファン)を増やすことで、日本のソフトパワー強化を目指した国策事業の一つでした。

 この試みは2020年以降のコロナ流行などをきっかけに沈静化しましたが、2024年の訪日外国人数は2019年を上回るなど「クールジャパン戦略」はそれなりに結果を出しつつあるのです。実は今年6月、政府は「新たなクールジャパン戦略」という方針を打ち出しており、アフターコロナにおける「日本ファン」の拡大、多様化、深化を改めて取り組む姿勢を示しています。

 市場のテーマ性で整理すると「クールジャパン戦略」の一部が「インバウンド関連」といったところですが、やはり「クールジャパン戦略」の王道は、これまで何十年という長い年月をかけて評価されてきた日本のアニメや映画でしょう。今回は、こうした観点から日本のアニメ、映画関連銘柄を五つご紹介します。

あの作品はどこの会社?世界に誇る日本のアニメ・映画関連銘柄5選

銘柄名 証券コード 株価(円)
(9月25日終値)
保有IP
IGポート 3791 2,073 「進撃の巨人」「攻殻機動隊」「ハイキュー!!」「SPY×FAMILY」
東映アニメーション 4816 3,110 「ワンピース」「ドラゴンボール」「スラムダンク」
ソニーグループ 6758 1万3,775 「鬼滅の刃」「銀魂」「うる星やつら」
壽屋 7809 1,590 「メガミデバイス」「アルカナディア」
バンダイナムコHD 7832 3,329 「機動戦士ガンダム」「ELDEN RING」

※HDはホールディングスの略

IGポート<3791>

「進撃の巨人」「攻殻機動隊」など根強い人気を誇るタイトルのIP(知的財産権)を保有している企業です。足元では、「進撃の巨人」に「ハイキュー!!」「SPY×FAMILY」を加えた3作品でIP売上の半分以上を占めています。

 まさに当たればデカいアニメ産業っぽい収益構造ですが、「銀河英雄伝説」や「君に届け」など根強い人気のIPを有することから、こうした作品の継続的な利益計上も重要な収益源です。なお、2025年5月期も過去最高の売上高および営業利益を見込んでいます。

東映アニメーション<4816>

 数多くのメジャーなIPを保有する企業です。筆頭株主は老舗映画会社の東映(9605)で、大株主にはテレビ朝日ホールディングス(9409)フジ・メディア・ホールディングス(4676)と大手テレビ局もそろい踏みです。国内外のIPの稼ぎ頭は「ワンピース」「ドラゴンボール」がツートップで、海外のみだと「スラムダンク」です。

 こうした豊富なメジャーIPを保有していることで、各アニメーション映画の興行収入やグッズ販売で安定した利益を生み出しています。世界で有名なアニメ企業として要注目です。

ソニーグループ<6758>

 日本を代表するエレクトロニクス企業ですが、グループ会社のアニプレックスがアニメを主とした映像作品の企画・製作などを展開しています。有名作品として「鬼滅の刃」「銀魂」「うる星やつら」などがあり数多くのヒット作を生み出しています。

 また、ソニー・ピクチャーズ(買収前の名前は、コロンビア・ピクチャーズ)という米を代表する映画会社を1980年代に保有するなど早いタイミングで映画産業に取り組んでいました。さすが日本を代表するエンタメ企業です。

壽屋<7809>

 プラモデルやフィギアの企画や製造などを展開しています。プラモデルでは、主力の自社IP商材である「メガミデバイス」の造形調整が国内や中国市場で高い評価を得ています。

 また、競争が激化している「美少女プラモデル」ジャンルでも圧倒的な存在感を示しており、今後、アジア市場だけではなく、販路拡大中の北米市場でも人気自社IP商材「アルカナディア」の売上増が期待されます。日本の専売特許でもあるフィギアやプラモデルでアジアや北米市場など海外で勝負していることから、まさに「クールジャパン戦略」と言えます。

バンダイナムコホールディングス<7832>

 主にゲーム関連が主力です。グループ会社のバンダイナムコピクチャーズが多くのIPの企画を展開しており、「機動戦士ガンダム」プラモデルやカードゲームなどの高利益商材が好調に推移するなどトイホビー事業が柱です。

 今後は、アクションRPGの「ELDEN RING」の継続的な販売好調や、家庭用ゲーム「ドラゴンボール」シリーズの新作も投入される予定のため、2025年3月期業績は好調推移が見込まれています。