円高、国内外株安を受けて、国内株投信の残高が伸びたという
8月上旬の株式市場急落はなかなかショッキングな出来事でしたが、おおかたの個人投資家はパニックにならなかったようで、時代の変化を感じます。
10年以上前なら、こうした相場の急落があると個人投資家はマーケットから遠ざかる傾向がありましたが今は違います。iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)やNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を活用している個人投資家は相場の騰落に左右されず積立投資を続ける傾向が高く、また市場の短期的な下落時にも投資を簡単に止めなくなりました。
8月上旬の投資信託の売買動向などを調べてみると、「国内株の投資信託に買いの動きがあった」という興味深いデータもあります。ここしばらくはとにかく「外国株投信を買うのが正解だ」という流行がありました。国内株も今年に関しては十分上昇していますが、過去の騰落率などを引き合いに「オールカントリー系」「S&P500種指数系」の投資信託が人気となっています。
ところが、円高推移と米国市場の下落を踏まえてか、外国株投信では出金が上回る日があった一方で、国内株式市場の下落がありながらこちらは入金が上回る(つまり買いが上回る)日が出たのです。
「国内株5%は少ない!」と思うなら、オールカントリー「+α」は悪くない戦略
人気の外国株ファンドといえば「オールカントリー系」と「S&P500系」です。まずS&P500系の投資信託については当然ながら「米国株100%」となります。日本株は含まれていません。
S&P500系投資信託「だけ」を持つことは「国内株投資比率ゼロ%」であり、国内の株価の上昇は資産価値の上昇に寄与しないことになります。
オールカントリー系はどうでしょうか。こちらは全世界株式の名前のとおり日本株にも資産配分されています。しかし当該インデックスにおける日本株の割合はだいたい5%くらいです。
そして資産全体の3分の2くらいは米国株に回っています。これは時価総額の問題ですから、インデックスが日本を過小評価しているわけではないものの、オールカントリー系投資信託「だけ」を持つことは「国内株式投資比率約5%」ということです。こうした指摘をすると「私が思っていた以上に、日本株には投資されていない」と言う人が少なからずいます。
もし、「もうちょっと多く、国内株への投資比率を高めてもいいかも」と思えるなら、「オルカン系+日本株投信」「S&P500系+日本株投信」というポートフォリオにステップアップしてみてもいいでしょう。
国内株投資比率を何割にするべきかはかなりの難問
何が効率的な資産配分か、は永遠の難問です。アセットクラスの設定、期待リターン、リスク、相関係数の設定いずれによっても資産配分比率は変わってきます。
例えば公的年金運用(GPIF)と企業年金連合会の運用は基本ポートフォリオが違っています。まず、GPIFは国内株25%、外国株25%としています。なんとなく4分割しているようですが、一応前提にはアセットクラスごとの基礎値の設定や分析が行われています。
企業年金連合会は株式投資比率を50%としていますが、国内外の比率は固定していません。ベンチマーク上は国内株4割、外国株6割なので、これを踏まえれば国内株が20%、外国株30%となります(ただし積立水準が110%以上の場合、株式投資比率は40%に抑えるというように、積立水準に余裕がある場合は株式投資比率を抑える仕組みもある)。
全国の企業年金はどうかというと近年はリスク抑制的な資産配分になっており、国内株11%、外国株12.5%と合計しても資産全体の4分の1程度です。
とはいえ、いずれも「国内株:外国株」のウエートだけに着目すれば、「1:1~2:3」くらいとなっており、「外国株100%で勝負!」「オールカントリーなので国内株は5%!」のような個人投資家よりは厚めに国内株を持っていることになります。
一方で、国内株へのウエートが高すぎる、いわゆるカントリーバイアスが生じているのではないかという議論もあり、適正な保有比率は定まっていません。
ざっくり考える「米国株+日本株」
近年「オルカン系」あるいは「S&P500系」を一本保有するトレンドが生じた理由の一つとしては運用コストの低下がありました。なにせ国内投資をするより低いコスト、あるいは同程度で全世界へ投資ができてしまうのですから、その魅力は大きいといえます。
また、1本で保有したほうが投資は楽です。複数本持つと、それぞれの時価変動に応じた保有割合の調整、つまりリバランスも考えなければなりませんが、その手間もなくなります。
言い換えると、二つの投資信託をもって、自分が考える投資割合に近いポートフォリオを組成しようとしているのは、投資家としてのステップアップといえます。
「S&P500系」のみ保有していた場合、国内株へ投資する投資信託を同時保有する割合がダイレクトに国内株比率になります(それ以外は全て米国株)。
「オールカントリー系」のみ保有していた場合は、5%程度は国内株にも振り向けられていますから、その分を意識し(95:5に分けて考える)、新規保有する日本株投信を踏まえた、国内外への投資割合を考えます。
といっても、1%刻みで厳密に考えなくてもいいので(1%刻みでポートフォリオの効率性を検証することは個人には困難)、日本株をどれくらい保有したいかを考え、購入割合を決定してみるといいでしょう。
SNSなどでしばしばみかけるように、「オールカントリー系」+「S&P500系」を一緒に買うことはあまり意味がないと思いますが(米国株だけの割合が高まる効果が生じるため)、日本株投信を組み合わせるアプローチは検討の余地があるように思います。
この時期は台風などで外出を控えることもあるでしょうし、秋の夜長の検討事項としてもいいかもしれません。