会合の本丸はアラムコの価値向上。原油相場は政治色を強め、長期的に底堅く推移!?

 6日の記者会見後、サウジの大臣はアラムコの企業価値は数カ月以内に、2兆ドルに達する、と発言しています。産油国の大臣が集う中で自国の石油会社のアピールをしています。

 5日のOPEC総会の日に、アラムコのIPOにおける最終的な売り出し価格が32リヤルと公表されました。これはドル換算するとおよそ1兆7,000億ドルに相当し、2兆ドルに届きません。

 2兆ドルはもともと「ビジョン2030」を提唱したムハンマド皇太子が言及した額で、サウジの大臣は忠実にこの2兆ドル達成を公言しているのです。今年9月に交代した、サウジの大臣は、同大臣としては異例の王族出身です。

 2兆ドル達成には、32リヤル(およそ8.64ドル)のアラムコの株価をおよそ15%引き上げる必要があります。(発行済株式数は2,000億株。1株10ドルで時価総額2兆ドル)

 アラムコのIPOとその後の時価総額引き上げのために、9月のエネルギー大臣の交代があり、そのエネルギー大臣が、追加と見せかける手法、自らの負担増加で懐柔、美しすぎる動機、緘口令を巧みに操り12月の会合を主導した、といっても過言ではありません。

 これまでの会合の中で最も冷徹さを感じた今回の会合を終えて、原油相場は新しくも、後には戻れない境地に入ってしまったと感じます。(メディアとのコミュニケーション不足は今後、大きな課題となるとみられます)

 今後、原油相場は、これまで以上にサウジの政治的な圧力を受けながら推移するとみられます。サウジアラムコのIPOは軌道に乗れば、数年後には、サウジ国外での上場が検討されていると言われています。ニューヨークやロンドン、香港や東京などの市場の名前が挙がっています。

 サウジ国外市場での上場は、欧米などの金融機関に大きな利益をもたらすでしょう。そのことを考えれば、サウジ国外でのアラムコの上場はもはや既定路線と言え、そのための原油価格の維持(少なくとも急落を避ける)、そのための減産、そのためのサウジのなりふり構わぬ施策、という構図は今後、長期的に続く可能性があります。

 政治色を強めれば強めるほど、原油相場は底堅くなるでしょう。急落は産油国やアラムコと利害関係にある市場参加者・金融機関にとってマイナスの材料になるため、さまざまな方向からバイアスが掛かり、避けられるでしょう。

 今回の総会は、原油相場が政治色を強めるきっかけになったと筆者は考えています。今後は、需給バランスに加え、サウジやサウジと関わりが強い国、そしてそれらの金融機関の動向に目を配る必要があります。