“美しすぎる”追加減産の動機 追加減産の動機は美辞麗句だらけ

 OPECのプレスリリースには、今回の減産幅拡大の背景について、以下の趣旨の説明があります。

・OECD(経済協力開発機構)の石油在庫が過剰な状態にあるため、その削減のために減産幅の拡大が必要。
・近年、米国を中心にノルウェー、ブラジルなど、非OPEC諸国の原油生産量の増加が目立つ中、これ以上、世界の石油の需給バランスが緩まないように、減産幅の拡大が必要。
・米中貿易戦争など、世界景気に対する大きな懸念があり、石油消費量の見通しが引き下げられている。過剰な在庫を積み上げない適正な供給を行うため、減産幅の拡大が必要。
・スペインで開催中のCOP25(国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議)の考え方に準じる。持続可能な社会を目指すべく、CO2排出量の削減のため減産幅の拡大が必要。

 これらの減産幅拡大の背景から、OPECプラスが、世界全体のエネルギー供給を管理する責を負っていることを自認していることが分かります。世界の石油在庫、世界の石油の需給バランス、世界の石油消費量、そして世界の気候までも、OPECプラスが深く関わっていると考えています。

 世間は、OPECが世界全体に対してさまざまな面で大きな貢献をしてくれている、と受け止めるでしょう。そして、株式や通貨市場では「OPECプラスが減産幅拡大という予想を超えたサプライズ感をともなった決定をしてくれた」「事前予想では減産幅拡大は難しいという声があったが、見事に一連の会合で“原油相場の急落を避ける”内容で合意をしてくれた」と好意的に受け止めた参加者は少なくないと思います。

 実際はどうなのでしょうか? 今回の会合は、美しい表向きの印象と、数字などの詳細を見ないと見えてこない実態に、大きな乖離(かいり)があると筆者は考えています。