“美しくない”追加減産の実態 スクラム禁止、記者会見キャンセル

 まずは、複数の異例があった会合の進行の詳細についてみていきます。

図:一連の会合の進行における予定と実際
※会合はいずれもウィーン(オーストリア)のOPEC本部で行われた
※時間は現地時間(カッコ内は日本時間)

出所:各種報道より筆者作成

 驚いたことにOPEC総会後の記者会見がキャンセルされました。長年にわたりOPECを取材している人物によると、記者会見のキャンセルは初めてとのことです。

 OPEC総会が行われた1日目(12月5日)は、午前中にJMMCが行われましたが、もともとこのJMMCは前日の12月4日(水)に予定されていたものでした。

 JMMCがOPEC総会と同日になりスケジュールがタイトになった。それに加えて、サウジとロシアの大臣がJMMCの前にホテル会談をし、それが長引き、そして遅れて始まったJMMCも長引き、さらに遅れて始まったOPEC総会も長引き、そして記者会見がキャンセルされた、という流れです。

 一部の海外メディアはこの12時間近い長時間におよんだ会合を“marathon talk”(飽き飽きするくらい長い会合)と揶揄しました。これまではmarathon talkとなり夜遅くになったとしても、記者会見は行われていました。実際、昨年12月の会合も現地の深夜(日本時間の未明)に記者会見を実施しています。

 もう一つの異例は、囲み取材が禁止されたことです。scrum(スクラム)と呼ばれる囲み取材は、OPEC総会のおきまりのもので、会合が始まる前の時間帯に、会議室内で着席している(国ごとに要人が座る席が決まっている)各国の要人をメディアが取り囲んで行う取材です。

 許可された短い時間でできるだけ多くの重要な発言を引き出そうと、各メディアの担当者が一斉に要人を取り囲み(特にサウジの要人の周りに人だかりができる)、片方の耳で誰か(自社のスタッフか重要な顧客か?)と電話をしながら、片方の耳で要人と会話をしている様子が見られました。今回はそれが、初めてできなかった、というのです。

 そして、本部の建物に出入りする際や、JMMC後にOPEC総会の会場に移動する際の要人へのぶら下がり取材でも、多くが口を閉ざしていたとの話もあり、全体的には、緘口令(かんこうれい=口止め)が敷かれていたという印象を受けます。

 緘口令に、先述の“美しすぎる減産拡大決定の動機”。何か、隠したいことがあったのではないか? と勘繰りたくなるのは、筆者だけではないはずです。