中小企業の影響は小さい?

 貿易戦争による世界貿易の不透明感は、多国籍企業にとっては深刻な問題ですが、一方で中小企業に対する影響は比較的小さいのです。米国では民間部門の雇用の7割以上が中小企業で占められています。雇用統計上の数字がマーケットの考えるイメージよりしっかりして見えるのはこのような理由があります。

投資より雇用増した方が安上がり

 そして、こちらが大切な事ですが、企業の多くは将来の需要増に備えて雇用を減らしていないのです。工場建設などの新規投資を始めるとなると巨額の資金が必要なので、貿易交渉の行方がはっきりするまでは控えておこうと企業は考えます。実際、OECD(経済協力開発機構)諸国内の投資の伸びは2018年には4%だったのが、現在では1%にまで縮小しています。

 しかし、世界景気後退が、この不透明感にあるとすれば、貿易交渉が合意してモヤモヤ感が消えたら、すぐに景気は回復するはず。そのときにスタートダッシュできるように、雇用を確保しているわけです。仮に景気後退の原因がやっぱり需要減によるものだったとしても、工場を建てるなどの投資を中断するより雇用を減らす方が簡単だし、コストもかかりません。投資を控えるかわりに、雇用を増やしているのが第2の理由です。