FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策立案における指導者的立場にあるウォラー理事は、利下げについて、「あと数カ月は様子を見る必要がある」と述べています。FRBが利下げを開始するとすれば、7月よりも9月の可能性が高いと考えられます。

 雇用統計は、7月31日のFOMC(米連邦公開市場委員会)までにあと2回(今回と7月5日)、9月までにあと4回(8月2日と9月6日)発表されます。

 9月会合を前に8月22日から24日にかけて開催されるジャクソンホールのシンポジウムは、パウエル議長がFRBの利下げを世界の金融市場に伝える絶好のチャンスとなるかもしれません。

5月雇用統計プレビュー

 BLS(米労働省労働統計局)が6月7日に発表する5月の雇用統計では、NFP(非農業部門雇用者数)の予想は、前月より約1.5万人多い19.0万人増となっています。失業率は前月と変わらず3.9%で、平均労働賃金は前月比0.3%増(前月0.2%増)、前年比3.9%増(前月+3.9%増)の予想です。

 FRBは、雇用者の増加数の適正水準を20万人前後と考えているようですが、その水準を今月下回るならば、2カ月連続ということになります。とはいえ、雇用市場が弱まっている兆候はありません。米国の就業者は、今年になって4カ月間で99万人以上も増えています。どちらかといえば、過熱状態がまだ続いているとみるべきでしょう。

 最近の雇用統計は予想と発表値、発表値と修正値の差が大きく開く傾向があります。4月雇用統計のNFPの増加数は、予想の25.0万人増に対して17.5万人増と、7.5万人も下回りました。コロナ禍後に起きている冬と夏の季節変動の振幅の減少、いわゆる季節性の喪失という構造変化にBLSの季節調整モデルが十分に対応していないことが大きな誤差を生んでいるようです。