今後、私の人生で一番のベアマーケットに突入する(ジム・ロジャーズ)

 量的緩和が再開されたが、量的緩和には「出口」がない。量的緩和を永久に続けられるなら、経済政策で誰も苦労などしない。政府がいくら膨大な予算を組んでも、企業がいくら負債を抱えようと、政府は国債、企業は社債を中央銀行に買ってもらえばいいのである。

 しかし、この世にタダ飯(フリー・ランチ)というのは存在しない。

 著名投資家のジム・ロジャーズは「今後、私の人生で一番のベア(弱気)マーケットに突入する」と警告し、「債権バブルはあらゆるバブルと似ているが、これまでで最も酷いバブルだ。もしバブルがはじけたら、極めて多くの人々が甚大な損失を被るだろう。世界の歴史の中で、金利水準が世界中これほどの規模で低下したり、マイナス金利となった例はない。MMT(現代貨幣理論)は(ちょっと)ばかげていると思う。いろいろ試されてはいるが、もしMMTが事実なら、いま世界で一番お金持ちの国はジンバブエだったはずだ。アルゼンチンもとても裕福になっているはずだ。私はMMTなどばかげていると思う。「タダ飯」なんてものは、世の中に存在しないのだから。一時的には効果はあるかもしれないが、長期的にはしっかりと裏付けされたお金がないと、全てが瓦解(がかい)する」と、述べている。

 今、米国ではジャンク債の市場やIPO(新規公開株)市場がかなり混乱している。これまで売れていたインチキな会社のジャンク債が売れないのである。これは、例のWeWorkの詐欺問題が大きく影響していて、IPO市場も崩壊に向かっている。

 米国の報道では、「レバレッジドローンを保有するCLO(*)ファンドは、4Q(第4四半期)にさらなる急激なセルオフに見舞われる恐れがある」「エリザベス・ウォーレン上院議員がCLO格付けに目をつけている」と、日本の金融機関が大量買いしているCLO市場に警鐘を鳴らす報道が多いが、ゼロヘッジの報道では、「CLOファンドは、米国のレバレッジドローンの最大の買い手であるが、投資家が弱い経済データや債務を抱えた企業に対して金融的なストレスがかかる兆候を回避しようとするため、4Qに急激なセルオフに見舞われる可能性があると、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのアナリストは最近、クライアントに向けたノートで警告した」という。

*CLO:投資家が高利回りを得るために買っている質の低いローン担保証券

 現在の資産も負債も膨らますというネズミ講的な両建て経済がいつまで続くのか分からないが、おそらく、ある日突然崩壊することになるだろう。しかし、今回の措置でバブルはしばらく延命する可能性がある。