人気トップ3、窪田のコメント

 人気上位の3位まで、以下、個別にコメントします。

【1】    オリックス(8591)

 オリックスは、優待に加え、予想配当利回りが5.3%(8月27日時点)と高いことも魅力です。今期、市場予想では、営業最高益を更新する見通しです。

 オリックスは、長期に安定収益を稼いでいく銘柄と考えています。リース事業でコア収益を稼ぎつつ、信託・保険・事業投資など幅広い多角化で利益を稼いでいます。前期で見ると、海外事業でセグメント利益の31%を稼いでいます。海外で利益を拡大していく金融株として評価しています。

【2】    ヤマダ電機(9831)

 結論から言うと、私はヤマダ電機への投資は見送るべきと判断しています。優待人気株として常に上位に出てくるのですが、ヤマダ電機を長年分析してきたアナリストとして、違和感を覚えています。

 ヤマダ電機は、構造的に収益力が低下しています。同社は、2017年3月期から2019年3月期まで、3期連続で業績見通しを下方修正しました。

 2017年3月期の営業利益を、同社は期初に714億円と予想していましたが、着地は578億円。18年3月期の営業利益は、期初予想が746億円でしたが、着地は387億円でした。そして、前期(19年3月期)の営業利益は、期初予想が721億円でしたが、着地は278億円となっています。

 今期(2020年3月期)の営業利益について、ヤマダ電機は426億円と前期比52.9%の増益を見込んでいますが、信頼性は低いと言わざるを得ません。10月に消費税が引き上がった後、売上げが低迷する可能性があります。

 ヤマダ電機の利益低迷が続くのは、国内家電販売(市場全体)のせいではありません。国内の家電出荷金額は好調です。2017年に20年ぶりに過去最高を更新した後、2018年も増勢が続いています。高付加価値の新製品が次々と出ることによって、国内で買い替え需要が盛り上がっています。こうした追い風を受け、ビックカメラなど家電量販店の業績は全般に好調です。業績を見ると、ヤマダ電機の一人負けとなっています。

 2つの経営戦略のミスが、ヤマダ電機の構造的な収益低下につながっていると判断しています。1つは、「出店戦略」のミス。都市部に集中出店せず、郊外や地方に大量出店したのが裏目に出ました。もう1つは、「多角化戦略」のミスです。不退転の覚悟で参入した住宅事業が足を引っ張っています。家電販売と住宅販売は、それぞれ専門知識が必要で、シナジーを出しにくい面があったと考えています。

 住宅の販売員には高度な専門知識が必要で、家電量販店でその人員を育成するのは容易でありません。住宅事業の経営そのものにも、下請け業者の管理や部材の調達などで家電量販店とはまったく異なるノウハウが必要です。新商品の開発競争も厳しくなっています。

 スマートハウスや介護住宅の開発で、優位にたつのは困難です。ヤマダ電機が買収した旧エスバイエルは、ツーバイフォー工法で安価な規格品を作るのに強みがありましたが、多様な商品開発が求められる時代に入って、競争力が低下しつつありました。ヤマダ電機の傘下に入っても、強みを取り戻すのは難しい状況です。

【3】    ANA HD(9202)

 ANA HDは、前期営業利益で最高益を更新しました。今期も、ほぼ前期と同水準の営業利益を予想しています。観光ブームの恩恵を受けています。訪日外国人観光客の増加に加え、日本人の海外旅行も増えつつあります。今年5月のゴールデンウイークでは10連休の恩恵で、例年を大幅に上回る旅客を確保できた模様です。

 同社の最高益更新に貢献しているのは、羽田発着便の増加です。新たに配分される発着枠の配分を多く受けてきたことが、業績拡大に寄与しています。世界の航空業界を見渡すと、既存の大手航空会社は、LCC(低運賃の航空会社)との競争激化で、軒並み業績が悪化しています。

 日本の航空会社の業績が好調なのは、海外に比べると、まだ国内ではLCCとの競合が少ないからと言えます。特に、羽田空港では、深夜しかLCCが発着しないので、羽田空港が航空会社のドル箱となっています。

 ANAはこれからも観光ブームの恩恵を受け、長期投資に適格の優待銘柄と判断しています。ただし、将来、羽田空港にLCCが大量に入ってくるようになる場合は、投資判断を変える必要が出ます。羽田空港の発着枠は簡単に増やせないことと、現時点での日本の航空行政を見る限り、そのリスクは低いと考えています。

 8月19日の日経電子版報道によると、2020年3月に実施される羽田空港の国際線発着枠の増枠分について、国土交通省がANAへ13.5枠(便)、日本航空に11.5枠割り当てる方針で最終調整に入りました。ANA、日本航空の業績拡大に寄与する見込みです。

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