今日は、9月の人気優待トップ10についてコメントします。

9月に優待を得る権利が確定する銘柄の人気トップ10

 人気トップ10【注】は、以下の通りです。

【注】人気トップ10
 9月に株主優待を得る権利が確定する銘柄は、416あります。楽天証券のお客様で保有している株主の数が多いほど、人気が高いと判断し、保有株主数の上位10社をピックアップしました。

 ただし、明らかに「優待」以外の目的で保有しているお客様が多い銘柄はランキングから外しました。具体的には、「新車購入割引」のみの優待、「カレンダー贈呈」のみの優待銘柄は、優待で人気が出ているとは考えられないことから、ランキングから除外しています。

人気
順位
コード 銘柄名 株価 配当利回り 優待内容 1株配当金
1 8591 オリックス 1,517.0 5.3 優待内容 79.9
2 9831 ヤマダ電機 492.0 2.8 優待内容 13.6
3 9202 ANA HD 3,595.0 2.1 優待内容 75.0
4 7412 アトム 996.0 0.2 優待内容 2.0
5 7867 タカラトミー 1,110.0 2.7 優待内容 30.0
6 9201 日本航空 3,275.0 3.4 優待内容 110.0
7 7267 本田技研工業 2,484.0 4.5 優待内容 112.0
8 7421 カッパ・クリエイト 1,389.0 0.4 優待内容 5.0
9 7550 ゼンショーHD 2,395.0 0.8 優待内容 20.0
10 4661 オリエンタルランド 15,205.0 0.3 優待内容 44.0
※単位 株価:円  配当利回り:%  1株配当金:円
出所:楽天証券「株主優待検索」。配当利回りは今期(2020年3月期)の1株当たり年間配当金(会社予想)を8月27日の株価で割って算出。ただし、年間配当金の予想を公表していないオリックス、ヤマダ電機、カッパ・クリエイトは市場予想を使用

 株価の右側の「優待内容」を押すとと、どのような優待を実施しているかご覧いただけます。

「いつまでに買わないと優待や配当の権利が得られないか」には、ご注意ください。上記に掲載した人気トップ10銘柄は、すべて9月末が権利確定日です。したがって、権利付き最終日は「9月26日(木)」です。9月26日までに買うと9月末基準の優待や配当金を受ける権利が得られます。9月27日(金)(権利落ち日)に買っても9月末基準の優待や配当金は得られません。

 なお、優待内容は予告なく変更されることもありますので、常に最新の情報をチェックしてください。楽天証券HPでは、1カ月ごとに優待内容を更新しています。

「配当利回り」も重要。減配リスクには注意

 優待投資を始めようと思っている方に、「優待内容の魅力」だけ見て、予想配当利回りを見ない方もいらっしゃいます。予想配当利回りも、必ず見るようにしましょう。配当利回りが高ければ、受け取った配当金で好きなものを買うことができるからです。

 優待品が魅力でも配当利回りが低い銘柄は、株主への利益配分が充実しているとはいえません。優待品と配当金の魅力を両方見て判断するのが、合理的です。

 配当金に着目した投資魅力度で、人気トップ10を分類すると、以下の4分類となります。

【1】高配当利回り株として注目できる3銘柄
オリックス(予想配当利回り5.3%)、本田技研工業(同4.5%)、日本航空(同3.4%)

【2】配当利回りがそこそこ高く評価できる2銘柄
 タカラトミー(予想配当利回り2.7%)、ANA(同2.1%)

【3】配当利回りは高いが業績不振が続いており、投資すべきでないと考える銘柄
 ヤマダ電機(予想配当利回り2.8%)→業績評価について、レポート後半で詳しく解説

【4】配当利回りが低くて、あまり評価できない4銘柄
 ゼンショー(予想配当利回り0.8%)、カッパ・クリエイト(同0.4%)、オリエンタルランド(同0.3%)、アトム(同0.2%)

 1つ注意すべきことがあります。配当利回りは確定利回りではありません。業績が構造的に悪化すると、減配になり株価が下がることもあります。業績にも注意しましょう。

人気トップ10銘柄の業績を「営業利益」でチェック

 優待銘柄を選ぶ時、「優待内容」「配当利回り」だけで決める方もいますが、株式投資である以上、最低限、足元の業績はチェックしましょう。まず、人気トップ10の前期(2019年3月期)から今期(2020年3月期)にかけての連結営業利益の推移を見てください。

9月優待人気トップ10の連結営業利益:前期実績と今期予想

出所:各社決算短信より作成。今期の業績予想を開示していないオリックスのみ日経クイックコンセンサス予想を使用。営業利益率は、今期営業利益予想を、今期売上高予想で割って算出

 営業最高益を更新していく力があると判断している3社(オリックス、ANA、タカラトミー)は、長期投資対象として適格と考えます。上の表をご覧いただくとわかる通り、上記3社は、今期営業利益で最高益、あるいは、ほぼ最高益に並ぶ利益を上げることが予想されています。

 業績動向とともに重要なのは、業績の安定性です。営業利益率の欄を見てください。営業利益率は業績の安定性を測る、参考指標になります。

 営業利益率に着目した投資魅力度で、人気トップ10を分類すると、以下の3分類となります。

【1】営業利益率が高く、業績は安定的と評価できる3銘柄
オリエンタルランド(営業利益率・今期予想19.4%)、オリックス(同13.9%)、日本航空(同10.9%)

【2】営業利益率がそこそこ高く、業績はそこそこ安定的と評価できる2銘柄
 タカラトミー(営業利益率・今期予想8.1%)、ANA(同7.7%)

【3】営業利益率があまり高くないので、やや注意を要する3銘柄
 本田技研工業(営業利益率・今期予想4.9%)、アトム(同4.7%)・ゼンショーHD(同3.6%)

【4】営業利益率が低く、注意を要する2銘柄
 カッパ・クリエイト(営業利益率・今期予想1.8%)、ヤマダ電機(同2.5%)

人気トップ3、窪田のコメント

 人気上位の3位まで、以下、個別にコメントします。

【1】    オリックス(8591)

 オリックスは、優待に加え、予想配当利回りが5.3%(8月27日時点)と高いことも魅力です。今期、市場予想では、営業最高益を更新する見通しです。

 オリックスは、長期に安定収益を稼いでいく銘柄と考えています。リース事業でコア収益を稼ぎつつ、信託・保険・事業投資など幅広い多角化で利益を稼いでいます。前期で見ると、海外事業でセグメント利益の31%を稼いでいます。海外で利益を拡大していく金融株として評価しています。

【2】    ヤマダ電機(9831)

 結論から言うと、私はヤマダ電機への投資は見送るべきと判断しています。優待人気株として常に上位に出てくるのですが、ヤマダ電機を長年分析してきたアナリストとして、違和感を覚えています。

 ヤマダ電機は、構造的に収益力が低下しています。同社は、2017年3月期から2019年3月期まで、3期連続で業績見通しを下方修正しました。

 2017年3月期の営業利益を、同社は期初に714億円と予想していましたが、着地は578億円。18年3月期の営業利益は、期初予想が746億円でしたが、着地は387億円でした。そして、前期(19年3月期)の営業利益は、期初予想が721億円でしたが、着地は278億円となっています。

 今期(2020年3月期)の営業利益について、ヤマダ電機は426億円と前期比52.9%の増益を見込んでいますが、信頼性は低いと言わざるを得ません。10月に消費税が引き上がった後、売上げが低迷する可能性があります。

 ヤマダ電機の利益低迷が続くのは、国内家電販売(市場全体)のせいではありません。国内の家電出荷金額は好調です。2017年に20年ぶりに過去最高を更新した後、2018年も増勢が続いています。高付加価値の新製品が次々と出ることによって、国内で買い替え需要が盛り上がっています。こうした追い風を受け、ビックカメラなど家電量販店の業績は全般に好調です。業績を見ると、ヤマダ電機の一人負けとなっています。

 2つの経営戦略のミスが、ヤマダ電機の構造的な収益低下につながっていると判断しています。1つは、「出店戦略」のミス。都市部に集中出店せず、郊外や地方に大量出店したのが裏目に出ました。もう1つは、「多角化戦略」のミスです。不退転の覚悟で参入した住宅事業が足を引っ張っています。家電販売と住宅販売は、それぞれ専門知識が必要で、シナジーを出しにくい面があったと考えています。

 住宅の販売員には高度な専門知識が必要で、家電量販店でその人員を育成するのは容易でありません。住宅事業の経営そのものにも、下請け業者の管理や部材の調達などで家電量販店とはまったく異なるノウハウが必要です。新商品の開発競争も厳しくなっています。

 スマートハウスや介護住宅の開発で、優位にたつのは困難です。ヤマダ電機が買収した旧エスバイエルは、ツーバイフォー工法で安価な規格品を作るのに強みがありましたが、多様な商品開発が求められる時代に入って、競争力が低下しつつありました。ヤマダ電機の傘下に入っても、強みを取り戻すのは難しい状況です。

【3】    ANA HD(9202)

 ANA HDは、前期営業利益で最高益を更新しました。今期も、ほぼ前期と同水準の営業利益を予想しています。観光ブームの恩恵を受けています。訪日外国人観光客の増加に加え、日本人の海外旅行も増えつつあります。今年5月のゴールデンウイークでは10連休の恩恵で、例年を大幅に上回る旅客を確保できた模様です。

 同社の最高益更新に貢献しているのは、羽田発着便の増加です。新たに配分される発着枠の配分を多く受けてきたことが、業績拡大に寄与しています。世界の航空業界を見渡すと、既存の大手航空会社は、LCC(低運賃の航空会社)との競争激化で、軒並み業績が悪化しています。

 日本の航空会社の業績が好調なのは、海外に比べると、まだ国内ではLCCとの競合が少ないからと言えます。特に、羽田空港では、深夜しかLCCが発着しないので、羽田空港が航空会社のドル箱となっています。

 ANAはこれからも観光ブームの恩恵を受け、長期投資に適格の優待銘柄と判断しています。ただし、将来、羽田空港にLCCが大量に入ってくるようになる場合は、投資判断を変える必要が出ます。羽田空港の発着枠は簡単に増やせないことと、現時点での日本の航空行政を見る限り、そのリスクは低いと考えています。

 8月19日の日経電子版報道によると、2020年3月に実施される羽田空港の国際線発着枠の増枠分について、国土交通省がANAへ13.5枠(便)、日本航空に11.5枠割り当てる方針で最終調整に入りました。ANA、日本航空の業績拡大に寄与する見込みです。

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