なぜ米国は貿易戦争を始め自滅的なことばかりやっているのだろうか?

 米中貿易戦争に関する照会が多い。なぜ米国は勝者がいないと言われる貿易戦争を始め、外交でも自滅的なことばかりやっているのだろうか? これまでの世界秩序の枠組みでものを見ていると、訳が分からなくなってくる。

筆者が考えるトランプ米大統領の戦略はおおむね以下のようなものであると思われる。

  • 米国ファースト
    グローバル企業の生産体制を破壊し、生産拠点を米国に戻す(米国人の雇用の確保)。
  • 同盟国から米軍を撤退させ、軍事的に独立させる。その過程で軍事兵器を売り込み、貿易赤字を縮小させる(トランプは戦争するふりをするが、実際に戦争はしない)。
  • 貿易戦争(関税・数量規制)の終着点は貿易不均衡の是正と米国の赤字解消であり、最終的には「プラザ合意2.0」が発動される可能性が高い。

 トランプ大統領にとって貿易戦争は通貨切り下げへの序章に過ぎない。貿易戦争に勝者はいないというのは歴史がすでに証明しており、米中ともに損を被ることになる。しかし、トランプ大統領はそれでもいい。数量規制をしようが高い関税をかけようが、どのみち貿易赤字は減らないので、最後は為替で調整する。次の選挙でトランプ大統領が再選を果たした場合は、プラザ合意2.0を実行するだろう。今の貿易戦争はあくまでそのお膳立てである。したがって、貿易戦争は簡単には終わらない。

●ドル/円(月足)米国こそ為替操作国? 為替の歴史は政治の歴史である

出所:石原順