「24カ月以内に景気後退が始まる確率は年初に比べ2倍以上に高まった」というグッゲンハイムの予測

 2,900億ドル(約32兆円)余りを運用する米投資会社グッゲンハイム・パートナーズは、『株式相場は概してリセッション(景気後退)の2年前に上昇し、1年前から下落する』というモデルを発表している。

【24カ月以内にリセッション(景気後退)が始まる確率は年初に比べ2倍以上に高まった。グッゲンハイム・パートナーズが9日のリポートでこのような見方を示した。景気先行指数が悪化しイールドカーブが逆転、金融政策がタイト化していることを同社は指摘した。CIO(最高投資責任者)のスコット・マイナード氏が率いるチームはリポートで「次のリセッションは前回ほど深刻にならないだろうが、通常より長期化する可能性はある。国内外の政策当局が景気後退に立ち向かう手段が限られているからだ」 と分析した。

リセッションについてのその他の予測

  • 企業の債務比率が高く、また「大規模なジャンク転落」が発生する可能性が高いため、クレジット市場は通常よりも大きな打撃を受ける可能性がある
  • 現在の高いバリュエーションのため、株式相場は40~50%下落し得る
  • リセッションは来年前半に始まる可能性もあるが、米金融当局のハト派転換で現在の成長サイクルが延びる公算もある】

出所:4月10日 ブルームバーグ『24カ月以内のリセッション確率、2倍以上に高まった-グッゲンハイム』

 市場参加者は薬物中毒者のように緩和期待にどっぷり浸かっている。足どころか、腰まで浸かってしまっており、市場が壊滅的に崩壊するまで足抜けできないだろう。

 米国株は自社株買いだけで上がっている。しかし、米国では自社株買いに反対する声が高まっており、来年の選挙シーズン前に自社株買いをやってしまおうという駆け込み需要も多いと聞く。

【自社株買いは一貫して最大の米株式需要の源泉だった。自社株買いがなくなれば、株式需要は劇的に減少するだろう」と分析した。選挙の争点として政治家の注目がコーポレートガバナンス(企業統治)に集まる中、自社株買いに反対する声が高まっている。マルコ・ルビオ上院議員(共和)や複数の民主党上院議員、大統領選への出馬を表明したバーニー・サンダース議員は自社株買いを厳しく批判し、関連の法整備を提案している。ゴールドマンが集計したFRBのデータによれば、2010年以降の自社株買いは純ベースで年間平均4,200億ドル(約46兆7,700億円)に上ったが、家計と投資信託、年金基金および外国人投資家による購入はそれぞれ100億ドル未満だった。】

出所:4月9日ブルームバーグ『「自社株買いのない世界」をゴールドマンが考察-不吉な結果に』

 NYダウはPPT(市場の急落を阻止するチーム)とFRBのPKO(価格維持操作)によって最高値を更新するかもしれないが、逆に最高値を更新するまでは三尊天井疑惑で危なくて買えないのが今の相場だ。

NYダウ(週足)と波動カウント

出所:石原順

 また、NYダウが高値を更新したところで、バフェット指標やCAPE(シラー式PER)がこんな割高なレベルでは、長期投資はできない。今年の相場はしっかりストップロス注文を入れて短期のトレーディングベースで挑むしかない相場だと言えるだろう。

バフェット指標

CAPE(シラー式PER)

 バブル相場はいつの時代も下げ相場を知らない初心者ほど儲かる。だが、最後はバブルの崩壊に巻き込まれてしまう。バブル相場は押し目買いという成功体験の積み重ねなので、途中で降りられないからだ。「あなたは、好きな時にチェックアウトできます。しかし、あなたは二度と立ち去ることはできません」というホテルカリフォルニアの歌詞が浮かんできそうだ。

 この10年間の中央銀行バブル相場は下げ相場を知らないミレニアル世代が牽引してきた。だが、リスクは生きている。そう遠くない将来にアダム・スミスのいう『神の見えざる手』が働いて、バブル相場も調整局面に入るだろう。