3月20日のFOMCのハト派転換に対し、新債券王のガンドラックは以下のようにツイートした。

「3カ月前、FRBは現在とはまったく異なる政策を予測していた。そんな彼らがどうして2020年の政策を真面目くさった顔で予測することができるのか。」

「利上げに対しての消極的なスタンスは中央銀行の信頼性を損なう上に経済における不確実性をもたらし、バックファイアするだろう」(『”DoubleLine's Jeffrey Gundlach calls Fed's 'reversal' on rates 'stunning” ダブルラインのジェフリー・ガンドラック、Fedの利上げ停止を驚きとコメント』 3月22日ロイター)とも語っている。

 今後各国が利下げの方向に動けば一時的に株が上がるかもしれないが、その裏側でスタグフレーション(不景気の物価高)という歪みがドンドン増幅していく。株安や不動産安という景気後退を懸念してFRBは利上げを停止し、資産売却も停止する方向にあるが、米国の利上げ停止はドル安につながりインフレ圧力が増し、いずれかの時点でFRBは利上げに動かざるを得ない事態に遭遇するかもしかない。ここで、中央銀行バブルは終わりとなる。中央銀行バブルの終りはインフレだ。インフレになったら、FRBは利下げもQE4(量的緩和政策の再開)も出来ない。

米国の経済政策とドル相場

出所:石原順

 FRBは株高維持のためにドル相場を犠牲にする方針らしい。財政赤字の拡大が止まらない中、世界的な不景気を受けて、足元の米長期金利は低下している。だが、今後FRBが利下げに動く気配を見せればドルは急落するだろう。ドル安が進めば、高い金利を要求されて米金利も上昇に向かう可能性がある。金融緩和やドル安がインフレにつながると、市場は天国から地獄に落とされるだろう。何度も言うように、中央銀行バブルの終りはインフレだからだ。債券王ジェフリー・ガンドラックは、「金利急騰とドル安が財政赤字拡大とともに起こるのは危険なカクテルであり、1987年のブラックマンデー相場を想起させる」と述べている。

「灰色のサイ(グレー・リノ)」は市場において高い確率で存在し、大きな問題を引き起こすにもかかわらず、軽視されがちな材料のことを指す。サイは体が大きく反応も遅い、そして普段はおとなしい。しかし一度暴走し始めると誰も手を付けられなくなり、爆発的な破壊力を持つことから比喩的に使われている。

 不動産バブルや債務の膨張、地域紛争、インフレ、少子高齢化、富の偏在と格差、政策変更等、常に存在しているものの、9年半も中央銀行バブル相場が続くうちに慣れてしまい、「今のところは」全く問題視されていない。しかし、サイが暴れなくなったわけでは決してないだろう。

米長期金利(週足)景気後退をうけて長期金利は2.3%台まで低下

出所:石原順

ドルインデックス先物(週足)ドルは既に天井を付けている!?

出所:石原順