レイ・ダリオは今の世界状況が 1937 年と似ていると発言しているが、次のチャートはロバート・プレクターによる「1936 年から 1938 年の NY ダウの波動カウント」である。1929年の大恐慌を経て米国政府は金融緩和や財政刺激(ニューディール政策)を含め様々な策をうって経済を支え、1937 年に利上げを始めたが、FRBの利上げによってNYダウは高値から下落し半値まで落ちてしまったのである。相場の急落の背景には常に FRB の金融政策の失敗がつきまとっている。 

1936 年から 1938 年の NY ダウの波動カウント 

 何度でも同じことは繰り返される?1937年は金融緩和の環境で米国経済が回復、FRBは利上げに動いたのだが…

出所:エリオットウェーブインターナショナル

 

 いずれにせよ、大統領の金融市場作業部会というトランプ政権の圧力によって相場が維持されているというのが、現在の米国株式市場の姿である。

 米国だけではない。中国も景気対策に動いており、減税が1兆5,000億元(約24兆円)前後、インフラ投資が1兆1,600億元(約19兆円)に及び、金融緩和も進めている。今後は、「日本の真似をして中央銀行が株を買うのではないか…」との観測も根強い。

上海総合指数(月足)

出所:石原順

 

パウエル・プットの落とし穴

 FRBはもう<パウエル・プット>でバブル崩壊を救済できないと思われる。それは、米著名投資家のドラッケンミラーが言っているように、FRBはリーマンショックを引き起こす原因となったものをその3倍にも拡大してしまったからだ。

連邦準備銀行の総資産 4兆1,000億ドル

出所:セントルイス連銀

米国の連邦債務(対GDP比)

出所:セントルイス連銀

 

 現在のバブルがまだ延命するという見方は多い。だが、1987~1989 年の日本のバブル、1990 年代前半の新興国(ジャンク債)バブル、1995~2000 年のIT バブル、2000~2007年のサブプライム住宅バブルの崩壊などを経験している投資家ならわかると思うが、いったん相場が崩れてしまえば、<利下げでは株の下落が止まらない>ことを思い出すべきであろう。

 下のチャートは1998年からの米FF金利とNYダウの推移である。相場がいったん崩れてしまえば、FRBの政策は後手に回るビハインド・ザ・カーブとなり、もっと利下げしろという催促相場に見舞われるのだ。

米FF金利とNYダウの推移(1998年~2019年)

出所:石原順

 

 上がりすぎた相場は下がり、下がりすぎた相場は上がる。株式市場の調整は利下げによって止まるものではない。株価が適正か割安な水準まで下がらないと止まらないのである。

バフェット指標 100を超えると株式市場は割高