魅力的なものがないので何もしていない

 バークシャー・ハサウェイは4月に60億ドル程度の株式を売却したが、今後の手元現金はさらに増える可能性があると発表している。記録的に積みあがった現金にもかかわらず、バフェットはここ数年、大きな買収をしていない。バフェットは、「魅力的なものは何もなかったからだ」「魅力的なものがないので何もしていない」と述べている。

バフェット指標とバリューゾーン

注:株が投資するに値する価値を生むのは、下のバフェット指標の黄色の帯のゾーン、70~50のレベルまで下落した時である。
出所:マーケットウォッチ

 バークシャー・ハサウェイの株価は四半期ベースで大幅下落となっているが、自社株買いを減らしている。バフェットは、「株価は、自社株買いをするレベルではなく、現金のオプション価値を含む他のことをして大きく踏み出すことをしようと思っている」と語った。

バークシャー・ハサウェイB株(日足)

出所:石原順

 ウォーレン・バフェットはFRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長を高く評価し、

「私は長年にわたり、連邦準備制度理事会の委員長としてポール・ボルカーを特別に評価してきた。私の見解では、パウエルと連邦準備制度理事会は彼に匹敵する。それは3月中旬に行動したからだ。

 おそらく彼らは2008年と2009年に起きたことを参考にしたのだろう。彼らは大胆に行動した。その月の後半、3月23日に市場は凍り付いた。しかし、その月は歴史的に社債発行の最大の月となった。

 3月末と4月に債券を発行したすべての人は、FRBに感謝の手紙を送るべきだ。彼らが本当に前例のないスピードと決意を持って行動していなかったら、それは起こらなかっただろう」

 と述べた。パウエルのQEインフィニティ(無限大介入)を評価しながらも、「魅力的なものがないので何もしていない」と、株をまったく買っていないところがバフェットらしい。2008年の金融危機の際には株の大量買いに動いたが、今回はとても慎重である。

 バフェットは、「今のパンデミックのようなことが起こった場合、それを織り込むのは難しい。だからといって、少なくとも私の見解では、借りたお金(証拠金)で投資をしたくない」「借金をしてでもアメリカの偉大な追い風に乗る理由はないが、そうする理由もある」「アメリカに賭けることはできるが、どのように賭けるかは注意する必要がある。市場ではありとあらゆることが起きるからだ」と述べた。

 今、バフェットは投資タイミングをひたすら待つ姿勢のようだ。コロナウイルスによって市場が混乱する中、2008年のリーマン・ショック時のように株式や企業の買収を急いでいない。それは興味深いことだ。バフェットいつ動くのかを引き続き注視したい。