バフェットが航空会社をすべて売却した理由

 ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは5月2日にオンラインで年次株主総会を開いた。これまで損切りやリストラを避けてきたバフェットも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって、いったんの撤退を余儀なくされている。

「私たちが何かを売却するとき、一部ではなく、保有分全てを売却することがよくある。中途半端なポジションは取らない。我々が企業に接するときは中途半端な態度はとらない」と、バフェットは保有していたデルタ航空アメリカン航空ユナイテッド航空サウスウエスト航空の株式を投げ売りし、すべて売却した。

 バフェットは自社株買いを否定しながらも、保有しているのはアップルなどの大量の自社株買いを実施している企業である。バフェットがIBMを手放したのは自社株買いをしないからだ。政府から救済を受けている航空会社は今後何年にもわたって自社株買いをすることはない。これが、バフェットが航空会社をすべて売却した理由である。

 バークシャー・ハサウェイが公表した2020年1-3月期決算は株安で497億ドル(106円換算で5兆2,682億円)の赤字となった。2020年3月末時点の手元資金は、2019年末から100億ドル増加して過去最大の1,370億ドル(約14兆4,220億円)となった。

バークシャー・ハサウェイの現金ポジションの推移 手元現金は過去最大の1,370億ドルに増加

出所:ゼロヘッジ

魅力的なものがないので何もしていない

 バークシャー・ハサウェイは4月に60億ドル程度の株式を売却したが、今後の手元現金はさらに増える可能性があると発表している。記録的に積みあがった現金にもかかわらず、バフェットはここ数年、大きな買収をしていない。バフェットは、「魅力的なものは何もなかったからだ」「魅力的なものがないので何もしていない」と述べている。

バフェット指標とバリューゾーン

注:株が投資するに値する価値を生むのは、下のバフェット指標の黄色の帯のゾーン、70~50のレベルまで下落した時である。
出所:マーケットウォッチ

 バークシャー・ハサウェイの株価は四半期ベースで大幅下落となっているが、自社株買いを減らしている。バフェットは、「株価は、自社株買いをするレベルではなく、現金のオプション価値を含む他のことをして大きく踏み出すことをしようと思っている」と語った。

バークシャー・ハサウェイB株(日足)

出所:石原順

 ウォーレン・バフェットはFRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長を高く評価し、

「私は長年にわたり、連邦準備制度理事会の委員長としてポール・ボルカーを特別に評価してきた。私の見解では、パウエルと連邦準備制度理事会は彼に匹敵する。それは3月中旬に行動したからだ。

 おそらく彼らは2008年と2009年に起きたことを参考にしたのだろう。彼らは大胆に行動した。その月の後半、3月23日に市場は凍り付いた。しかし、その月は歴史的に社債発行の最大の月となった。

 3月末と4月に債券を発行したすべての人は、FRBに感謝の手紙を送るべきだ。彼らが本当に前例のないスピードと決意を持って行動していなかったら、それは起こらなかっただろう」

 と述べた。パウエルのQEインフィニティ(無限大介入)を評価しながらも、「魅力的なものがないので何もしていない」と、株をまったく買っていないところがバフェットらしい。2008年の金融危機の際には株の大量買いに動いたが、今回はとても慎重である。

 バフェットは、「今のパンデミックのようなことが起こった場合、それを織り込むのは難しい。だからといって、少なくとも私の見解では、借りたお金(証拠金)で投資をしたくない」「借金をしてでもアメリカの偉大な追い風に乗る理由はないが、そうする理由もある」「アメリカに賭けることはできるが、どのように賭けるかは注意する必要がある。市場ではありとあらゆることが起きるからだ」と述べた。

 今、バフェットは投資タイミングをひたすら待つ姿勢のようだ。コロナウイルスによって市場が混乱する中、2008年のリーマン・ショック時のように株式や企業の買収を急いでいない。それは興味深いことだ。バフェットいつ動くのかを引き続き注視したい。

トルコリラ/円相場のテクニカル分析

 以下は前回のレポートで取り上げたトルコリラ/円相場の1時間足・4時間足・日足・週足のチャートである。

 筆者のトレンドフォロー(順張り)取引のツールである「標準偏差ボラティリティトレードモデル」では、相場に方向性が出てくると、標準偏差ボラティリティとADX(アベレージ・ディクショナル・インデックス)が上昇する。標準偏差ボラティリティとADXが低い位置から上昇する場合は、相場が保ち合いを離れ、強い方向性をもつシグナルとなる。

 相場に大きなトレンドが発生する可能性のある局面は、標準偏差ボラティリティが上昇し、ボリンジャーバンドの±1シグマをブレイクしたときである。相場がボリンジャーバンドの±1シグマの外側にあるうちはトレンド相場が継続しており、ポジションを持ち続けると大きなトレンドをとらえることができる。

 一方、標準偏差ボラティリティとADXがピークアウト(天井をつけ下落)すると、トレンド期とはやや逆方向にバイアスがかかった「横ばいレンジ内での乱高下相場」となりやすい。

 相場で大きな収益機会になりやすいのは、標準偏差ボラティリティとADXが低い位置から一緒に上がっていく局面で、これを相場用語では「保ち合い放れ」・「レンジ・ブレイク」・「ボラティリティ・ブレイクアウト」などと呼んでいる。

 ワイルダーが考案したADXはDI(方向性指数)の平均(アベレージ)で、価格の変動幅を指数化してトレンドの強弱を指数化したものだ。これまで一般的なADXと波形が違うという質問を山ほど受けてきたが、筆者はワイルダーのオリジナルADX、すなわち、ADXを電卓で計算する簡易法である<修正平均ADX>を使っている。標準偏差ボラティリティとADXの2つの指標が低い位置から一緒に上昇している時は、相場が保ちあいを離れ強いトレンドが発生したという判断になる。

 よく誤解されるが、標準偏差ボラティリティとADXはトレンドの強弱を表す指標であり、相場が上昇しているのか、下落しているのかを示す指標ではない。

 標準偏差ボラティリティは、ジリ高・ジリ安相場には弱いという弱点があるが、確率の勝負においては最もロジカルな指標であることは間違いないだろう。相場の逆張り・順張り・オプション取引など、何にでも使える便利な指標である。筆者は、長年この指標でトレンドの有無を確認してきた。それはこれからも変わらないだろう。

トルコリラ/円(1時間足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:ADX(14)=黄・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤の期間=買いトレンド・黄の期間=売りトレンド
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

トルコリラ/円(4時間足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:ADX(14)=黄・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤の期間=買いトレンド・黄の期間=売りトレンド
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

トルコリラ/円(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:ADX(14)=黄・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤の期間=買いトレンド・黄の期間=売りトレンド
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

トルコリラ/円(週足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:ADX(14)=黄・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:赤の期間=買いトレンド・黄の期間=売りトレンド
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 トレードの結果を「損小利大(そんしょうりだい)」にするには、相場についていくという順張りの手法が最適である。標準偏差ボラティリティとADXでトレンドを判定し(トレンドの判定)、ボリンジャーバンドの±1シグマでロスカットを設定する(損失限定)。そして、相場が±1シグマの外にある限り利食いはしない。相場が±1シグマの外にある限り、利益は伸びていく(利益の極大化)。

 標準偏差ボラティリティやADX、またボリンジャーバンドのパラメーターを変えることは問題ないが、筆者はパラメーターの最適化は一切しない。標準偏差ボラティリティは26、ADXは14、またボリンジャーバンドは21で固定している。

「相場をどう認識するか?」という手段の一つとして、現在ではテクニカル分析の手法を理解することは不可欠であろう。標準偏差ボラティリティトレードは、すべての市場と時間枠(タイムフレーム)に拡張が可能である。また、日足と週足の標準偏差ボラティリティのピークアウト時は、オプション(ボラティリティ)の売りにも威力を発揮する。

 この世に絶対にもうかるシステムなど存在しない。しかし、標準偏差ボラティリティトレードモデルは、相場でもちあいゾーンとトレンドゾーンを識別するツールにはなるだろう。

ラジオNIKKEI音楽特番『Music Voyage Anthology』―こんな時だから届けたい、誰もが口ずさめる応援歌―

 ゴールデンウイーク中の5月5日に楽天証券の楠雄治社長、楽天証券広報の松﨑裕美さんの音楽番組と筆者の音楽番組、そして、松﨑裕美さんの登場する安室奈美恵特番が放送された。

4月29日(水・祝)

12:20~13:20 Music Voyage Anthology 矢沢永吉特集

 生き様すべてがかっこいい。時代を超えて活躍を続けるロッカー・矢沢永吉さんの凄さを、楽天証券の永倉弘昭常務執行役員とタレントの津田麻莉奈さんがヒットソングとともにお伝えします。やっちゃえ!矢沢永吉特集!

5月5日(火・祝)

10:30~11:30 Music Voyage Anthology ~みんなへの応援歌~

 楽天証券・楠雄治社長と、現役ファンドマネージャー・石原順さんによる、「こんな時だから届けたい、誰もが口ずさめる応援歌」をお送りします。

13:00~15:00 石原順の日々の泡~音楽と出会った日

 マーケット番組でお馴染みの現役ファンドマネージャー・石原順さんの知識は、投資や経済だけではございません!音楽に関しても知識豊富。かっこいい大人のエッセンスがつまった楽曲を、石原順さんが語ります。

18:00~19:00 Music Voyage Anthology ゴールデンナミエウイーク

 ゴールデンウイーク中に、ゴールデンな安室奈美恵さん特集です。安室奈美恵さんへ愛を叫びたい!輝き続ける彼女の楽曲を、楽天証券広報の松﨑裕美さん、フリーアナウンサーの上野優花さん、メディカルドクター・タレントの川村優希さんがご紹介します。

 今年のゴールデンウイークの『Music Voyage Anthology』、聴き逃した方は、放送後の番組が聴けるラジコのタイムフリー(1週間聴取可能)でお楽しみ下さい♪5月5日の放送は、5月12日(火)まで聴取可能です。