米国の経済悲惨度は低位でバイデンの支え~無党派層の動向がカギ

 11月本選挙までは道のりが長く、不測の事態を含めてトランプ氏当選が確実視されているわけではありません。米国の有権者は概して、新鮮味のない「バイデンとトランプの再対決」に盛り上がりを欠いている状況です。バイデン大統領は「高齢・健康不安」や「無所属立候補者(ロバート・ケネディー・ジュニア氏など)の影響」が相対的な弱点とされる一方、トランプ氏は「複数の刑事裁判の行方と影響」、「無党派層の支持」、「共和党穏健派の支持」が当選に向けたアキレス腱とされています。

 参考までに、1970年以降の大統領選挙で再選を目指した現職大統領が再選を逃した当時の「経済悲惨度指数」(失業率+コアインフレ率)の水準を図表3で示しました。

 フォード落選(1976年)、カーター落選(1980年)、ブッシュ(父)落選(1992年)、トランプ落選(2020年)当時の「経済悲惨度指数」が高水準であったのに対し、バイデン政権下の現在(2月時点)は7.7%と比較的低いことが分かります。選挙本選に向けた失業率とインフレ率の動向は、バイデン大統領再選の行方にとりカギとなりそうです。

<図表3>比較的低い「経済悲惨度」はバイデン大統領の支えとなるか

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1970年1月~2024年2月)

 米国の世論調査によると、民主党支持者でもなく共和党支持者でもない「無党派層」が有権者の約4割を占めるとされます。こうした中、「世界的な歌姫」と呼ばれ強力なインフルエンサー(Instagramのフォロワー数は約2.8億人)として知られるテイラー・スウィフトさんの言動が注目されています。

 詳細は以下をご参照ください→S&P500の目標値を上方修正:スウィフトさんが大統領選を動かすならいつ?(香川睦) | トウシル 楽天証券の投資情報メディア

 米国では「セレブ」と呼ばれる有名な歌手が(是非はともかく)政治的な立場を表明することはめずらしいことではありません。

 実際、「リベラル」(中道左派寄り)であることが知られているスウィフトさんは、前回(2020年)大統領選挙の直前(10月)に「トランプ大統領は白人至上主義者で人種差別の火を焚きつけている」と痛烈に批判した上で、「大統領選では誇りを持ってジョー・バイデン氏とカマラ・ハリス氏に投票する」と表明。民主党政権誕生に寄与したことが知られています。

 スウィフトさんの「無党派層」への影響度は4年前と比べて格段に増している状況です(2024年1月のニューズウィーク誌・世論調査結果)。トランプ陣営からの政治的な圧力やけん制を受けている中で彼女が「バイデン支持を再表明するか否か」と「再表明するならいつか」は、無党派層の投票行動に想定以上の影響を与える可能性があり軽視できないと考えています。

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