「トランプ返り咲き」には懸念される点も期待される点もある

 トランプ氏とバイデン現大統領が、7月の共和党大会と8月の民主党大会で大統領候補者指名を受けても、9月から10月に3回実施される「大統領候補者討論会」の結果と影響を注視する必要があり、どちらかの当選を「決め打ち」はできません。とはいえ、現時点では「Real Clear Politics」(世論調査)や「PredictIt」(賭けサイト)などは、トランプ優勢を予想しています。

 トランプ氏は大統領在任中から、Twitter(現在のX)を介した過激な発言で市場を揺さぶった経緯があり、11月5日の本選挙に向けて「トランプ・リスク」を織り込む夏から秋にかけて、市場がいったん警戒するというリスクがあります。

 特にトランプ氏が公約に掲げる「米国第一主義(孤立主義)」や「対中輸入関税を60%超に引き上げる」との公約は、西側同盟国との外交混乱、米中対立激化、インフレ懸念を市場が不安視する可能性もあります。

 一方、バイデン大統領は3月7日に連邦議会で行った「一般教書演説」で、大統領2期目に「法人増税」や「富裕層増税」を実現したい意向を表明しました。トランプ氏は、伝統的な共和党の政策路線に沿い、自身が大統領在任中に実現させた法人減税の延長や規制緩和の推進を提唱しています。

 どちらも、大統領選挙日に同時実施される上下両院議会議員選挙の結果(上院議会と下院議会の勢力図)次第でその実現が難しくなる可能性があり不確実です。

 ただ、トランプ氏が当選する場合は大統領令で決定できる「パリ協定からの即時離脱」や(バイデン政権下で進められた)「EV(電気自動車)普及策や再生エネルギー振興策」の中止を決める可能性が高く、市場では「EV、再生エネルギー関連株」に試練を与えそうです。

 逆に、シェール関連株を含むエネルギー株や石炭株には追い風となるとの見方が浮上しています。一方、バイデン再選ならオバマケア(医療保険制度改革法)推進に伴う薬価引き下げ圧力でヘルスケア関連(薬品株など)が劣勢になるとの見方も出ています。

<図表2>大統領候補者の政策公約と影響比較(概略)

(出所)各種報道より楽天証券経済研究所作成(2024年3月時点)